2013 Fiscal Year Research-status Report
強いHIV-1増殖抑制能を持つHIV-1特異的細胞傷害性T細胞に関する研究
Project/Area Number |
25870550
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
村越 勇人 熊本大学, エイズ学研究センター, 産学官連携研究員 (60646123)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞傷害性T細胞 / HIV / HLA |
Research Abstract |
アフリカ、欧米のHIV-1感染者では、HIV-1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)のコホート解析の結果から、Gagタンパク質に対する反応がHIV-1の増殖抑制に大きく影響することが知られているが、日本ではこのような網羅的なHIV-1特異的CTL応答の解析が行われていない。そこで我々は、日本人HIV-1感染者でのHIV-1感染の制御に関わるHIV-1エピトープ特異的CTLを同定するため、401人の無治療慢性HIV-1感染者について、Gag、Pol 、Nef領域を網羅している11アミノ酸オーバーラップHIV-1ペプチドのカクテルへのCTL反応、HLA拘束分子、ウイルス量あるいはCD4T細胞数との関係を調査した。その結果、低いウイルス量ならびに高いCD4T細胞数と有意な相関を示すHLA拘束性のカクテルへの反応を23種類見つけ出した。また、それらのカクテルに含まれる最適なエピトープペプチドの同定を試みた結果、8種類のHLAに拘束された19個のCTLエピトープの同定に成功した。 同定したエピトープ特異的CTLが日本人HIV-1感染者でのHIV-1感染のコントロールに重要であるかを再評価するため、393人のHIV-1感染者におけるエピトープ特異的CTL反応をELISPOT assayによって解析した。その結果、5種類のHLAに拘束される8個のGagエピトープおよび5個のPolエピトープに特異的なCTLが低いウイルス量ならびに高いCD4T細胞数と強く相関していることが明らかとなった。これらのCTLによるin vitroでのHIV-1増殖抑制能の解析を行った結果、いずれのCTLも強いHIV-1増殖抑制能を有することが判明した。以上の結果から、これら13個のエピトープ特異的CTLは、慢性日本人HIV-1感染者におけるHIV-1増殖抑制に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカ、欧米のHIV-1感染者に見られるHIV-1特異的CTLのコホート解析の結果、HIV-1 Gagタンパク質に対するCTL反応がHIV-増殖抑制能と有意に相関していることが示された。しかしながら、このようなコホート解析は日本ではまだ行われていない。また、HLAを含む遺伝的背景の違いから、日本人では異なる免疫反応が起きていると考えられる。本研究では、401人の無治療慢性日本人HIV-1感染者におけるHIV-1特異的CTL反応の解析を行い、5種類のアジア特有のHLAに拘束される13個のエピトープ特異的CTLが、日本人の慢性HIV-1感染者においてHIV-1のコントロールと強く関連していることを明らかにした。また、これらのCTLはin vitroにおいて非常に強いHIV-1増殖抑制能を示し、in vivoにおいて効果的にHIV-1増殖を抑制していると考えられた。以上の知見は、日本でのHIV-1予防・治療ワクチンの開発ならびにエイズの病態解析にきわめて有用であると考えられる。したがって、現在までに実施した研究は、本研究の目的の達成に向けて、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
増殖抑制能の高いCTL反応が起こると、HIV-1はエピトープ内で変異を起こしてCTLが感染細胞を認識できなくなり、変異したウイルスが体内に蓄積することが知られている(Goulder PJ, et al, Nat Med, 1997, 3:212)。そこで、日本人HIV-1感染者において同定したエピトープ内のアミノ酸シークエンスを調査し、HLA拘束分子を持つ人と持たない人の間でエピトープ内変異の頻度について統計解析を行う。HLA拘束分子を持つ人において有意に高い頻度の変異が見つかった場合、変異エピトープペプチドの作製を行い、コンセンサスあるいは変異エピトープペプチドを段階希釈して結合させたC1R細胞に対するエピトープ特異的CTLクローンのIFN-γ産生能を細胞内染色法で検出することで、それぞれの間で抗原認識能に差があるかを明らかにし、変異がCTLによって選択された逃避変異であるか判断する。逃避変異はHIV-1の増殖機能に影響を与え、また、そのような変異ウイルスがその変異に関わるHLAアリルを持たない人に感染した場合、コンセンサス配列のウイルスに戻ることが知られている(Leslie AJ, et al, Nat Med, 2004, 10:282)。そこで、逃避変異が見つかった場合、変異ウイルスを作製し、これらを健常人から分離したCD4T細胞に感染させ、コンセンサス配列ウイルスとの増殖能の比較を行う。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Host-specific adaptation of HIV-1 subtype B in the Japanese population2014
Author(s)
Takayuki Chikata, Jonathan M. Carlson, Yoshiko Tamura, Mohamed Ali Borghan, Takuya Naruto, Masao Hashimoto, Hayato Murakoshi, Anh Q. Le, Simon Mallal, Mina John, Hiroyuki Gatanaga, Shinichi Oka, Zabrina L. Brumme, and Masafumi Takiguchi
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Journal Title
Journal of Virology
Volume: 88
Pages: 4764-4775
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 日本人と白人におけるHIV-1サブタイプBのHLA-Associated Polymorphismの比較解析2013
Author(s)
近田 貴敬, Jonathan M Carlson, 田村 美子, Mohamed Ali Borghan, 成戸 卓也, 端本 昌夫, 村越 勇人, Simon Mallal, Mina John, 潟永 博之, 岡 慎一, Zabrina L Brumme, 滝口 雅文
Organizer
第27回日本エイズ学会学術集会・総会
Place of Presentation
熊本市国際交流会館、市民会館崇城大学ホール/熊本市民会館(熊本県熊本市)
Year and Date
20131120-20131122
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[Presentation] Establishment of a cohort of treatment-naive patients chronically infected with HIV-1 in Hanoi2013
Author(s)
Tran Van Giang, Tomohiro Akahoshi, Hayato Murakoshi, Nozomi Kuse, Madoka Koyanagi, Takayuki Chikata, Yoshiko Tamura, Nguyen T. Hoai Dung, Nguyen Vu Trung, Junko Tanuma, Keiko Sakai, Shinichi Oka, Nguyen Van Kinh and Masafumi Takiguchi
Organizer
第27回日本エイズ学会学術集会・総会
Place of Presentation
熊本市国際交流会館、市民会館崇城大学ホール/熊本市民会館(熊本県熊本市)
Year and Date
20131120-20131122
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[Presentation] HIV-1 polymorphisms associated with 4-digit HLA alleles in Japanese individuals chronically infected with the clade B virus2013
Author(s)
Takayuki Chikata, Jonathan M Carlson, Yoshiko Tamura, Mohamed Ali Borghan, Takuya Naruto, Masao Hashimoto, Hayato Murakoshi, Simon Mallal, Mina John, Hiroyuki Gatanaga, Shinichi Oka, Zabrina L. Brumme and Masafumi Takiguchi
Organizer
AIDS Vaccine 2013
Place of Presentation
Barcelona, Spain
Year and Date
20131007-20131010
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