2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870551
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山口 信 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (80570746)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スラリー充填繊維コンクリート / 耐爆性能 / 接触爆発 / 局部破壊 / 裏面剥離 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度の研究では、スラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)を対象に接触爆発試験を実施し、SIFCONが普通コンクリートや他の各種繊維補強コンクリートに比して良好な裏面剥離(スポール)低減効果を有することを示した。これに引き続き、平成26年度の研究では、前年度よりもさらに過酷な試験条件を適用し、普通コンクリート版の貫通限界版厚を大きく下回る版厚を有するSIFCON版の接触爆発に対する耐爆性能について実験的検討を行った。得られた主な知見は、以下のとおりである。(1)爆薬量が一定であれば、S-SIFCON(鋼繊維を用いたSIFCON)を適用することにより、スポール限界となる版厚を約50%、貫通限界となる版厚を約30%低減することが可能である。同様にPVA-SIFCON(ポリビニルアルコール繊維を用いたSIFCON)は、スポール限界版厚を約36%、貫通限界版厚を約22%低減する効果を有する。(2) 貫通が生じるような過酷な爆発条件下において、SIFCONは貫通孔直径の低減に効果を有する。また、SIFCONを適用することで、表面および裏面の残留ひび割れも顕著に低減される。しかし、SIFCONを適用しても爆発面破壊(クレータ)は殆ど低減されない。 ところで、火薬類の爆発を伴う災害においては、爆風に伴って構造物の破片が高速度で周囲に飛散するため、それら飛散物の衝突に対する部材の耐衝撃性の把握も重要な課題となる。そこで、良好な耐爆性能を確認しているSIFCONおよびポリエチレン繊維補強コンクリート(PEFRC)を対象に鋼製飛翔体の高速衝突試験を実施し、その局部破壊低減性能についても実験的検討を行った。その結果として、同一条件下で普通コンクリート版では貫通の発生が認められたのに対し、SIFCONおよびPEFRCを用いた試験体では明確な裏面剥離の発生が認められず、良好な耐衝撃性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SIFCONの適用によるスポールおよび貫通限界低減効率を定量的に示すことができた点で、平成26年度に予定していた「SIFCONの損傷予測法の構築」は十分に達成されている。それに加え、飛散物の衝突に対するSIFCONの耐衝撃性に関する知見も併せて得ることができた点で、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。但し、SIFCON版の破壊の数値シミュレーションに関しては、SIFCONと普通コンクリートとの状態方程式の差異を明確にする必要があると判断され、本件について更なる検討が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果によれば、SIFCONの適用によりスポールを大幅に低減することは可能であるものの、SIFCONを適用してもクレータを低減することは困難であると考えられる。すなわち、SIFCONの適用により効率的に当該部材の耐爆性能を向上させるためには、部材断面中でスポール破壊が懸念される裏面側に限定してSIFCONを適用するなどの部材設計上の工夫が必要となるものと考えられる。そこで、平成27年度の研究においては、総厚100mmの鉄筋コンクリート版に対して、スポール破壊が懸念される裏面側のみにSIFCONによる積層補強を施し、その積層補強厚を0, 25, 50, 75, 100mmの5水準で変化させたSIFCON積層補強鉄筋コンクリート版の接触爆発に対する耐爆性能について実験的検討を行う。なお、本実験はSIFCONをハーフプレキャスト鉄筋コンクリート部材へ適用することを想定したものであるが、将来的には、既存鉄筋コンクリート部材を対象とした断面修復工法へも適用できる可能性を有している。
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Causes of Carryover |
数値シミュレーションに必要な衝撃解析コード「ANSYS AUTODYN」を無償で導入することができたため、当初予定していた委託解析を実施する必要がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定よりも試験体を多く作製し、更なる実験的検証を行う。
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