2013 Fiscal Year Research-status Report
アジア地域の通貨法の新たな展開と調和に向けた国際私法及び実質法的観点からの研究
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25870557
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松永 詩乃美 熊本大学, 大学院法曹養成研究科, 准教授 (10456915)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際私法 / 国際民事手続法 / 国際通貨 / アジア / 統一通貨 / 統一法 |
Research Abstract |
25年度は、本研究課題の初年度にあたるため、主に国際通貨に関わる文献の収集に集中して行った。とりわけ、ユーロをめぐる議論は、本研究の基本的知識の習得に繋がるため欧米を中心とした文献中心に収集した。また、実際にユーロ圏における金融政策の実施を行っている欧州中央銀行(ECB)を訪れた。欧米の基本的文献は、予定どおり収集することができた。訪問したECB自体では、現在のことろ一般に開放されていないため、インターネット等でしか情報を得ることができないことが分かったが、現在新しくECBを建設中であり、移転後は一般に向けて施設自体も解放することになっているという情報を得た。今後は、ECBの情報のアクセスが容易になっていくものと期待する。 現在、本年度収集した文献の読み込みを行っているところであるが、近年完成された「ヨーロッパ私法の原則・定義・モデル準則ー共通参照枠草案(DCFR)」において、本研究課題の通貨に関わる実質法上の規定がなされていることが分かった。国際通貨に関する法的規律はこれまで非常に少なく、また法的な研究も活発になされてこなかったたが、この新しい統一私法は一つの大きな手がかりとなるといえる。今後、この規定に関する注釈書等を読み込み、これまでの他の規定を比較・分析をしながら、欧米での通貨をめぐる規定の標準を明らかにする予定である。 本研究課題の国際私法問題に関する文献は、非常に少ないことがわかったが、若干の専門書に検討がなされているため、それらを手がかりに国際私法上の通貨をめぐる諸外国の議論を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の25年度が対象とする欧米の通貨に関する実質法と国際私法について、そえぞれに対して資料調査が当初の研究計画どおりに進んでおり、基本文献を入手している。さらに、26年度に予定されている中国の調査については、研究協力者の協力を得て準備を遂行中である。現在、欧米の文献を読み込みを行っており、その中で、「研究実績の概要」で述べたとおり、DCFRの規定は新しい統一私法としてEUにおける一つの法的な水準を示すものであり、ユーロに関わる法として非常に参考になるものであるため、通貨に関わる法の大きな手がかりを得た。 また、日本の状況は、通貨に関する先行研究は非常に少なく、判例もほとんどないが、東京地裁平成25年1月28日判決が下された。この事案は、通貨や金融商品に関わって生じた紛争であったが、裁判所の判決では、本件を国際私法や国際民事訴訟法の問題であるとの観点から検討がなされなかった。そこで、H25年のこの事案および過去に国際私法上問題となった任意的訴訟担当に関する判例の検討を行い原稿を執筆中である。この裁判例は、本研究の日本の状況を検討する数少ない一つの例となろう。 次年度の研究計画を遂行する土台を築くことがができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、25年度に収集した文献を読み込み分析していくとともに、欧米の通貨に関する法的問題について原稿執筆する予定である。現在は、急遽日本で下された新しい判決について分析をしているが、26年度中には公表される予定である。 26年度に予定されている中国の法状況については、現在私自身が調べることのできる英語等の文献では中国の通貨そのものに関する法について記述された文献がない。実際に中国で本研究に関する法的規律があるかどうかについては、中国に人脈を有する研究協力者に協力してもらいながら明らかにしていく予定である。一方で、判決には外国通貨で支払いが認められた判決があり得るため、判例を中心に探しながら研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初出版予定が25年度であった洋書の出版が遅れているため。 購入予定であった洋書の出版がなされたら購入する予定である。
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