2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア地域の通貨法の新たな展開と調和に向けた国際私法及び実質法的観点からの研究
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25870557
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松永 詩乃美 熊本大学, 法曹養成研究科, 准教授 (10456915)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 通貨法 / 国際私法 / 民事訴訟法 / 国際民事訴訟法 / 国際金融法 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、本研究の2年目であり、昨年度に収集した資料を読み込むとともに、今年度の課題としていた中国の法状況に関する資料収集を上海で行った。中国では、日本では購入が難しい現地で販売されている代表的な国際私法の基本書を中心に収集した。また、中国の研究者の協力を得て、通貨に関する中国における司法解釈等を資料を得ることができた。本研究に関しては、中国においても直接的な研究がないため、当該分野に関わる法状況を分析し、そこから抽出できる解決法を明らかにしていくほかがないことが分かった。このように、中国そのものにおける議論も限られているため、中国法に関する法状況については、中国人研究者が海外で発表した文献がないかについても調査を行い、たとえば、中国の外国判決の承認執行に関する研究書が見つかり、来年度の最終年に向けて、この文献から基礎的知識を得て、国際通貨の問題においてどのよう問題が生じるかについて発展させていこくとが可能ではないかと考える。 今年度は、日本で長年関心が寄せられていた、アルゼンチン共和国を被告とサムライ債をめぐる訴訟について、任意的訴訟担当の部分について下された判決につき検討した論文を熊本ロージャーナルに掲載した。この事案は、金銭の支払いについて争われた内容そのものの結論を判断する前に、第三者である債券管理会社が訴訟担当できるかという問題について判断されたものである。そのため、国際私法上の問題について判決には直接言及されなかったが、仮にこの問題が直接判断されることになるとするとどのような議論が生じるかについては今後の検討課題となりうるが、今回の検討を通して、日本において通貨法の問題とされうる議論の中には、本来は金融法の議論も多いことが分かったため、今後に検討すべきことについて一定程度明確になったと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、主に中国法の状況を中心に調べる予定であった。当該分野の研究に直接答えるような文献は、存在しないものの、関連する法分野に関する資料は、かなり収集できた。なかでも、中国法については中国国外で発表された英語文献で、国際私法の観点から参考になるものが見つかったため、これからこの文献を読み込んで、検討の契機としたい。また、本研究申請時に混乱していた通貨をめぐる国際的な経済環境の悪化は、未だ解決の見通しがたっていないことも、この研究の遂行を、困難にさせているところである。その中でも、現時点で入手しうる文献はかなり収集できた。 他方、本研究の研究成果の一つとして、日本で下された判決をもとに論文を執筆することができた。何年も前から訴訟提起され社会的に関心を集めていたアルゼンチン共和国に対するサムライ債の事案について判決が下された。当初、この研究期間中に判決が下されるとは予想していなかったが、本研究の議論の一つの端緒となるのではないかと考え、急いで判例検討を行い執筆をした。いち早く、検討を行い、公表もできたのは、この研究課題の大きな成果の一つとなる。 とはいえ、この研究課題は、非常に新しいテーマであるがゆえに、直接それに答えるような文献がない。周辺の関連文献や立法を読み解きながら、少しずつ解決の糸口を探していくことになろう。既に公表した上記論文の研究によって、いわゆる通貨法と呼ばれている領域が、日本では実際のところ金融法領域とすべきものがあることがわかった。今後は通貨法概念を再検討した上で、各関連分野の範囲を画定しつつ、通貨に関わる問題、それからそれに関連する国際私法を含む私法上の問題を区別しながら検討を進めていくことで、この分野の体系的な検討ができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の現在までの達成度においても示したように、今後は、これまで集めてきた文献を集中的に読み込み、各分野の分析を行っていくことになろう。CISGやユニドロワ原則の規定、欧米の学説や判例の研究、そして、中国の法状況の調査と日本との関係での外国判決の承認執行についてそれぞれ別個に論文を執筆するための基礎とする。それとは別に、通貨法概念についても明らかにし、通貨法プロパーの問題の研究を今後行っていくための手法を構築したい。 今後は、中国法の文献や法律、司法解釈を読む必要がある。その際には、研究協力者の協力を得て研究を進めていく予定である。また、専門家の意見を聞きに、海外の大学に所属する研究者とコンタクトをとりたいと考えている。協力をしてくれる研究者がいれば、直接会って話しを聞く予定である。 これから分析を進めた後に、論文を執筆する予定であり、今年度か来年度には研究会に報告の上、公表をしたい。
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Causes of Carryover |
2年前に出版予定のドイツ民法の注釈書が、出版延期になっており、平成26年度に出版予定となっていたが、当該年度でも延期となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に出版されると、現時点ではなっているため、出版され次第購入する。
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