2013 Fiscal Year Research-status Report
大量発生予察に向けたオニヒトデ集団の広域受精遺伝子解析
Project/Area Number |
25870563
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
安田 仁奈 宮崎大学, 農学部, 助教 (00617251)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オニヒトデ / 国際情報交換 / 大量発生 / 非中立遺伝子 / サンゴ礁生態系 |
Research Abstract |
本年度は、夏季のオニヒトデ産卵期に、生殖腺の発達したオスのオニヒトデを採集した。野外から採集した精巣からメッセンジャーRNAを抽出し、次世代シークエンサー454によってRNAの網羅的塩基配列の決定を行った。得られた遺伝子配列は、アミノ酸配列に変換したのちBLASTによって相同性検索を行った。既に報告のあるウニや他のヒトデの受精遺伝子バインディンの配列を参照し、配列の後半に精子が卵を認識する領域に相当する非常に保存性の高い、アミノ酸配列“LGLLLRHLRHHSNLLARI”をもつ配列を検察した結果、類似配列をもつisotigを発見し、オニヒトデバインディン遺伝子として同定することができた。 精子が卵を認識する部分のアミノ酸配列は同じヒトデ類の既知のバインディン配列と2アミノ酸異なる配列であった。また、別種のヒトデで見つかったコラーゲン様繰り返し配列(KGKKGR)は見つからなかった。さらに次世代シークエンサーから得られたエキソン領域に複数のプライマーを設計することでゲノムDNAからイントロンを含む全長領域を伸ばすことを試みた。結果、ゲノムDNAからオニヒトデのバインディン全長を決定することのできる4組のプライマーを設計することに成功した。これは今後集団ごとに個々の場インディン遺伝子型を同定していく上で有効な遺伝子マーカーとして使うことできると期待される。 また、バインディン遺伝子の自然選択を検出するために、中立遺伝子マーカーであるミトコンドリアDloopおよびマイクロサテライト遺伝子座を用いて琉球列島およびフレンチポリネシアのオニヒトデ大量発生集団について、集団遺伝解析を行った。その過程で、フレンチポリネシアの様々な島で連続的におきたオニヒトデ大量発生集団は中立遺伝子マーカーで調べた限り、遺伝的に均一なものであることがわかった(Yasuda et al. 2014 in press)。今後、同様に大量発生した集団のバインディン配列を決定していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定通り、次世代シークエンサーを用いたオニヒトデの受精遺伝子の全長解析を行うことができた。さらに、エキソン部分だけではなく、イントロン領域を含めたゲノムベースで受精遺伝子配列を決定することができるマーカーの開発にも成功した。 また、一方で対照区となる中立遺伝マーカーを用いた解析手法も確立させ、大量発生集団での解析を行うことができた。そのため当初予定していた以上の研究成果が上がっていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後25年度中に開発したゲノムから受精遺伝子を増幅できるマーカーを用いて隣接していてタイミングの異なる大量発生集団および非大量発生集団の遺伝子配列を決定し、遺伝的な変異やアミノ酸配列の変異がどのように起きているかを明らかにする。また、中立マーカーとは異なる自然選択の働いている領域を明らかにする。 今後異なる年級群の集団を毎年採集していくことで、集団内の受精遺伝子の遺伝的多様性の推移を野外で観測していき、オニヒトデの個体群動態における受精遺伝子の役割を明らかにしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に人件費がより多く必要になることがわかったため、本年度から次年度に一部を繰り越すことに決めたため。 本年度繰り越した分は来年度の人件費として使用する予定。
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Research Products
(3 results)