2013 Fiscal Year Research-status Report
仲介取引のある競争市場理論の構築と派遣労働市場への応用
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25870575
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
大石 尊之 青森公立大学, 経営経済学部, 講師 (50439220)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 仲介取引 / 競争市場 / 派遣労働市場 / 理論経済学 / 労働経済学 / ミクロ経済学 / ゲーム論 |
Research Abstract |
労働者と企業双方が相手を探索する費用を下げて, 両者の組み合わせを助けるマッチメイカーとしての仲介者が市場にいる場合, 価格メカニズムだけでなくこの仲介者の役割も, 派遣労働市場の分配機能に影響することが考えられる. 価格メカニズムだけでは人と働き場所の最適な組み合わせを実現できなかったのが, 仲介者が適切な役割を果たすことでそれが実現できるかもしれない. このような価格メカニズムと仲介者を通じた派遣労働市場の分配機能の詳細を検討するためには, まずは仲介取引のある非分割財競争市場の基礎モデルを構築して, 市場に対する仲介者の役割を明らかにすることが欠かせない. 平成25年度は, このようなモデルを開発し, 市場均衡と仲介取引の関係を解明した. この成果は論文「Middlemen in the Shapley-Shubik Competitive Markets for Indivisible Goods」(上智大研究員の坂上紳氏との共著)としてまとめられ, 査読付き国際学術専門誌 Mathematical Economics Lettersに掲載が確定している. 開発されたモデルでは, 以下が解明された. 1: 仲介費用が売り手と買い手の探索費用の総和より相対的に小さいならば, 仲介取引を伴う競争均衡が常に存在し, (パレート)効率的資源配分が達成される. さらにこのような費用構造のもとでは, 仲介者の人数が売り手と買い手の人数のうち小さい方と等しいならば, 仲介者が市場に参加するインセンティヴが常に存在する. 2: 仲介費用が売り手と買い手の探索費用の総和より相対的に高いならば, 売り手と買い手間の直接取引を伴う競争均衡が常に存在し, 効率的資源配分が達成される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
価格メカニズムと仲介者の役割を通じた派遣労働市場の資源配分機能や交換利益の分配機能を分析するために欠かせない基礎的な経済モデルの構築が平成25年度の研究目標であった. 従って, 平成25年度は仲介取引のある非分割財競争市場を描写する基礎モデルを構築し, 仲介者が市場に与える影響を詳細に分析することに焦点が当てられた. これらの研究成果は論文としてまとめられ, 査読付き国際学術専門誌 Mathematical Economics Lettersへの掲載確定を得ることができた (なお, 同内容の論文を掲載確定前にディスカッション・ペーパーして公刊している). 当初, 平成27年度までに海外学術専門誌への掲載を1つの目標としていたので, これが達成できたことになる. 仲介者による売り手・買い手間の安定的な組み合わせをもたらす具体的なプロセスやルールの解明には現時点では至っていないが, 平成25年度で開発したモデルを発展させることでそれらの研究にも接近可能であると考えられる. 今後の研究課題としたい. 以上から, 当該年度の研究達成度に関していえば, おおむね当初の計画以上に進展できていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に開発した基礎モデル(Oishi and Sakaue, forthcoming)を一般化して, 派遣労働市場の分析に適切なモデルにする. 具体的には各企業が購入する労働力は複数単位として, 労働者が提供する労働力の間の代替的・補完的な関係も考慮したい. このようなモデルのもとで仲介業者の派遣労働市場に対する役割を解明する. 例えば, 仲介業者の派遣労働市場に対する影響を比較静学的に検討する. Oishi and Sakaue (forthcoming)のモデルでは, 仲介取引のある競争市場間の厚生比較が可能である. この枠組みを援用することで, この問題を検討できることが考えられる. また, 労働者と企業の最適な組み合わせをもたらすプロセスをアルゴリズムとして作成できるかどうかも検討したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は関連研究遂行のための海外研修として, 米国ロチェスター大学(William Thomson研究室)を訪問し, 主に労働市場のマッチングの問題を研究した. 一方, 平成25年度はモデルの構築に多くの時間を割いてしまったために, 海外等の学会で関連研究を報告する機会を持てなかった. そのため, 次年度使用額が約21万円ほど生じた. 平成26年度は関連研究遂行のために, 海外研修および海外等の国際学会での関連研究を報告する機会をなるべく多く持ち, 研究の最終目標の遂行に向けて適切に研究費を使用する予定である.
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Research Products
(3 results)