2013 Fiscal Year Research-status Report
虹彩模様の影により生体検知と個人認証を同時に行う高信頼虹彩認証法の開発
Project/Area Number |
25870603
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
高野 博史 富山県立大学, 工学部, 講師 (40363874)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | バイオメトリクス / 偽造虹彩 / なりすまし / セキュリティ / 生体検知 / 虹彩認証 / 個人認識 |
Research Abstract |
本研究では、近赤外光の照射方向を変化させることで生じる虹彩模様と虹彩端の陰影変化を組み合わせて生体検知を行う虹彩認証法の開発を行う。 虹彩端の陰影変化を利用した生体検知については、近赤外光の照射方向に対する虹彩端の陰影変化の特徴を調査し、生体検知法の性能評価を行った。最初に、3Dプリンタにより作製した人工眼球を用いて偽造虹彩を作製し、近赤外光の照射方向を変化させて、虹彩端に生じる陰影の特徴を生体虹彩と偽造虹彩で調査した。虹彩端の陰影から得られる特徴量は、正面(0°)から近赤外光を照射した時に得られた虹彩画像中の虹彩端付近における輝度値を基準として、斜め方向(15°~75°)から照射した場合の虹彩端における輝度値の変化量(輝度変動率)より算出される。実験結果より、生体虹彩では、照射角度が増加するにつれて輝度変動率が上昇するが、偽造虹彩では、照射方向が30°で輝度変動率が最大となり、さらに照射角度を大きくすると、輝度変動率が減少することが明らかになった。次に、各照射方向で得られた輝度変動率の差の割合を生体と偽造を識別するために用いる生体検知情報として性能評価を行った。実験の結果、偽造虹彩を誤って受け入れる偽造受入率は0%となったが、生体虹彩を誤って排除する生体拒否率が20%程度となった。 虹彩模様に生じる陰影変化を利用した生体検知では、これまでに虹彩認証法として提案された虹彩模様の局所的な輝度値の変化量を用いてコード化する局所輝度符号化法を利用する。この方法では、近赤外光の照射方向が異なる条件で得られた二種類の虹彩画像を用いて差分画像を生成し、コード化する際に得られる局所輝度の標準偏差を生体検知情報として用いる。本手法の有効性を評価するために、虹彩画像を印刷して作製した偽造虹彩を用いて実験を行った。実験の結果、生体拒否率および偽造受入率がともに0%になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
虹彩端陰影変化を利用した生体検知については、人工眼球を用いた偽造虹彩に対して生体検知法の評価実験を行い、偽造受入率を0%にすることができた。一方、虹彩模様の陰影変化を利用した生体検知については、印刷画像を用いた偽造虹彩に対して、偽造受入率0%が得られた。当初の計画では、シリコンゴムにより人工眼球の型を作り、ウレタン樹脂をその型に流し込むことで偽造虹彩を作製する予定であったが、本学に導入されている3Dプリンタを使用することができたため、偽造虹彩の作製に要する時間を短縮することができた。その結果、当初より被験者数やパラメータの種類を増やして評価することができた。 虹彩模様の陰影変化を用いた生体検知については、一枚の印刷虹彩画像を偽造物として評価を行った。個人認証に対する性能評価に関しては、47名の被験者に対して虹彩画像を取得し、予備的な解析を行った。 当初の研究計画では、生体検知については虹彩模様の陰影変化のみを使用することを想定していたが、検知精度を向上させるために、虹彩端の陰影変化を組み合わせることにした。また、虹彩模様の陰影変化を用いた生体検知や個人認証では、虹彩模様の三次元構造を模した偽造虹彩を作製して精度を評価する予定であった。しかし、三次元構造を持った偽造虹彩を登録者ごとに作製するには多大なコストがかかり、現実的でないことが明らかになった。そこで、比較的簡易に実現できるなりすまし方法を検討した結果、近赤外光の照射方向に対応した虹彩写真を印刷して、近赤外光の照射タイミングに合わせて照射方向に対応した虹彩写真を呈示する方法や、照射方向に対応した虹彩画像を液晶ディスプレイで呈示する方法について評価を行うことになった。平成25年度の達成度としては、70%程度であるため、やや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
虹彩端陰影変化を利用した生体検知については、人工眼球を用いた偽造虹彩に対して生体検知性能の評価を行った。評価実験の結果より、偽造受入率は0%であったが、生体拒否率が20%となった。平成26年度では、生体拒否率を向上させるために、生体検知に使用する特徴量の組み合わせを再考し、生体検知性能の評価を行う。 虹彩模様の陰影変化を用いた生体検知に関しては、当初、虹彩模様の三次元構造を模擬した人工眼球を作製して評価する予定であったが、個人ごとに異なる虹彩模様の微細な三次元構造を復元するには多大なコストを要するため現実的ではないことと、認証システムには生体虹彩を呈示して得られた情報が登録されており、認証時にのみなりすましが行われることを想定して、比較的簡易に登録情報を偽造することができる方法に対して性能評価を行うことにする。偽造方法としては、各照射方向に対応した虹彩画像をレーザプリンタで印刷し、近赤外光の照射方向に対応して虹彩画像を呈示する方法と、近赤外光の照射方向に対応して虹彩の写真を液晶ディスプレイに表示して呈示する方法とする。近赤外照明の照射方向は高速に切り替えられるため、照射方向に対応した印刷虹彩画像を呈示する方法は実現するには困難であるが、なりすましを行う上で理想的な状況として評価する。一方、液晶ディスプレイに虹彩の写真を表示する方法は、近赤外光の照射方向を検知することで照射方向に対応した虹彩画像を比較的容易に呈示することができるため、現実的な偽造方法として評価する。個人認証に関しても、生体検知の評価と同様に二種類の偽造方法について認識精度の調査を行う。個人認証に用いる特徴量抽出には、近赤外光の照射方向が異なる二枚の虹彩画像から得られる差分画像を用いる場合と、各照射方向で得られた虹彩画像をそのまま使用する場合の二種類で行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の使用計画では、シリコンゴムにより人工眼球の型を作り、ウレタン樹脂をその型に流し込むことで偽造虹彩を作製する予定であったが、本学に導入されている3Dプリンタを使用することができたため、3Dプリンタを使用して偽造虹彩を作製した。3Dプリンタの使用料はかからなかったため、予算として計上していた偽造虹彩の作製費用が残った。 前年度の余剰金は、平成26年度に新たに作製する偽造虹彩の費用やデータ保存用RAIDシステムなどの物品費、国内学会および国際会議での発表に要する旅費として充てる。その他の費用として、人件費・謝金は実験の被験者に支払う謝金とする。被験者数は20~30名程度を予定している。その他では、学会参加費や論文掲載料、英語論文の校閲料を計上している。
|