2014 Fiscal Year Research-status Report
地熱開発における手続統合型SEAによる合意形成モデル構築-国際先行事例調査から-
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25870612
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
柴田 裕希 東邦大学, 理学部, 講師 (40583034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 影響評価 / 持続可能性アセスメント / 地熱 / 合意形成 / ニュージーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地熱資源利用に関する多様なステークホルダ間で合理的かつ民主的な資源利用のガバナンスを実現するための政策ツールに関して、欧米の先行事例から我が国への応用可能な知見を得ることを目的としている。平成25年度の研究から得られたニュージーランドにおける先進事例の情報について、平成26年度は事例の詳細を把握するとともに、複数のステークホルダへのヒアリング調査および現地の地熱資源利用に関するフィールドワークを実施した。このフィールドワークでは、ワイカト広域自治体におけるNgatamariki地熱発電所開発の事例を基に、開発事業者、中央政府、広域自治体、地元地熱観光事業者等の関係者に、開発のプロセス、政策および計画の策定手法、開発の現状と正負の影響を中心とした政策面の調査を実施した。この結果、上位段階からの地元自治体による積極的な政策・計画管理とその際の戦略的環境アセスメントに相当する影響評価の実施、貯留層ごとの開発規制をともなうゾーニングなどが、日本と異なる有効な開発政策として抽出された。この成果については、地熱開発事業者等で構成される地熱研究会にて研究報告を行うともに、日本計画行政学会・社会情報学会共催の若手研究交流会に加え、国際影響評価学会(IAIA)において研究発表するに至った。 また、平成27年度の研究展開にむけて、日本での応用可能性を検討する一つの仮想事例として、伊豆大島における地熱開発を想定することとし、関係機関と協議の開始にむけた準備に着手した。この準備では、東京都大島支庁産業振興課及び大島町政策企画課へヒアリングを実施し、これまでの当該地域における地熱開発調査の有無、現在のエネルギー政策などを確認するに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づいて、海外の先進事例における開発事業について、その政策手法を調査し、我が国に有益と思われる知見が得られており、加えて最終年度にむけた国内の調査準備が進められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、二年度目に続いて手続統合型SEAの合意形成モデルを構築する。このモデルは、全体のプロセスモデルと各ステップにおける影響評価指標、参加手法の二つのサブモデルで構成する。影響評価指標のサブモデルでは、伝統的温泉利用と共生する持続的な地熱資源利用の枠組みを、総合的に評価する指標体系の整理を検討する。なお、指標の体系化に関しては、今後の国内の地熱評価指標に関する情報の収集に依存するため、利用可能な情報の範囲を踏まえて、指標作成の有無を改めて検討することとする。参加手法のサブモデルでは、温泉影響が生じた場合のリスク対策オプションの構築と、地熱資源に対するリスク便益分配のスキーム構築の手法をモデル化する。このモデル構築は、国内の開発候補地における実務担当者やプロセスに参加した温泉事業者・利害関係者らと議論を重ねながら研究を展開する、現場フィードバック型の研究とする。このモデルは、研究成果として今後の開発候補地に発信・提案することで、将来的な実装を目指すも のである。
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Causes of Carryover |
予定していた学外の研究協力者への謝金支払い手続きを最終年度に行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度より、学外の専門家から海外の政策情報の収集に際して協力を得ており、この研究協力に対する謝金として使用するほか、学会発表のための学会参加費や旅費に使用する予定である。
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