2013 Fiscal Year Research-status Report
超音波噴霧法によるCu2ZnSn(O,S)4の作製と高効率薄膜太陽電池への応用
Project/Area Number |
25870613
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
池之上 卓己 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (00633538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超音波噴霧法 / ミストCVD法 / 化合物太陽電池 / Cu2ZnSnS4 |
Research Abstract |
地殻中に豊富に存在し、無毒な元素から構成される化合物半導体として注目されるCu2ZnSnS4の太陽電池応用を念頭に、平成25年度は超音波噴霧法によるCu2ZnSnS4薄膜、Cu2ZnSn(O,S)4薄膜の作製を目指した。 まず、研究計画の第1ステップである超音波噴霧法によるCu2ZnSnS4薄膜の作製を実現した。Cu2ZnSnS4薄膜は、想定していたアセチルアセトナート錯体を原料とするものだけでなく、金属塩化物を利用しても成膜可能であることが分かった。Cu2ZnSnS4薄膜の組成比は、原料溶液をストイキオメトリ組成としていても特に硫黄(S)が抜けやすいことが分かり、硫黄の不足分は酸素(O)が混入していることが検出された。銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)は薄膜中にほぼストイキオメトリ組成に近い組成で含まれていることが確認された。なお、硫黄(S)の不足分を補償する形で混入していると考えられる酸素(O)は超音波噴霧法による硫化処理によって硫黄(S)に置き換えられ、条件によっては高品質なCu2ZnSnS4薄膜となるだけでなく、Cu2ZnSn(O,S)4薄膜の組成コントロールにも有用であることが示された。これらの薄膜の特性評価には未だ不十分なところが残っているものの、いずれの薄膜もp型導電性を示し、バンドギャップが1.4~1.6 eVであり、太陽電池応用の期待される結果が得られている。 今後は、太陽電池の試作とともにデバイス評価を行い、研究を遂行していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画は(1) Cu2ZnSn(O,S)4薄膜の成膜に適した前駆体材料や溶媒の探索、 (2) 成膜条件と薄膜特性の関係の解明および成膜条件の最適化、(3) 太陽電池に望まれる物性を有するCu2ZnSn(O,S)4薄膜の作製の3つであった。 このうち、(1)と(2)については、複数の前駆体材料での成膜を実現し、溶媒による特性の差異も明らかにした。このように、薄膜の作製を実現するだけでなく、成膜の条件に幅を持たせたことは非常に大きな成果であり、今後の太陽電池特性のフィードバックを得て再度条件を検討する際には非常に意義あるものになると考えている。 (3)については、検討が不十分な項目も残されている部分もあるが、太陽電池の試作を行うには十分な薄膜が作製されているので、今後の計画である太陽電池の作製・評価の結果とも併せて総合的に検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度は(1) Glass/Mo/Cu2ZnSn(O,S)4/ZnO/ZnO:Ga構造の連続作製と太陽電池の特性評価、(2) デバイス作製条件の最適化を中心に計画している。 具体的にはGlass/Mo基板上にCu2ZnSn(O,S)4、ZnO、ZnO:Ga層を超音波噴霧法で連続的に作製し、「非真空、単一プロセス」での太陽電池作製を実現することを目標とする。ZnOおよびZnO:Ga層は既に超音波噴霧法で作製に成功しているが、それぞれの層で層の成膜条件が大きく異なる場合は、他の層の特性に悪影響を及ぼす可能性もあり、これらの整合性も含めて検討していく必要があると考えている。また、作製した太陽電池デバイスの特性は、同様の構造であっても各層の特性や膜厚などの要因で変化するため、各層の薄膜物性と関連付けた太陽電池の特性評価を行い、それぞれの相関を調べ、太陽電池特性の向上を目指す。 さらに、Cu2ZnSn(O,S)4薄膜太陽電池の最終目標の一つとしてデバイス作製条件の最適化が挙げられる。デバイス作製条件の最適化によってCu2ZnSn(O,S)4薄膜太陽電池のエネルギー変換効率10%の達成を数値目標として掲げ、 研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、研究の遂行に成膜装置の仕様変更が不可欠であると考えていた。ところが、ちょっとした工夫を施すことによって従来の仕様でも基礎的な成膜実験を行うことが可能となった。そのため、基礎的な実験データを収集し、その結果も含めて成膜装置の仕様変更を行うことが、研究をより合理的に遂行することにつながると判断した。 その結果、平成25年度の予算に計上していた成膜装置の仕様変更を平成26年度に行うこととし、次年度使用額が生じた。 次年度使用額が生じた理由に記述したように、平成25年度中に行う予定であった生膜装置の仕様変更を平成26年度に行う。 その他、旅費・消耗品費等は、計画通り執行する予定である。
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Research Products
(6 results)