2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870621
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山田 俊児 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40454079)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 授乳期 / 吸乳刺激 / 神経経路 / カルシトニン遺伝子関連ペプチド / 脚周囲核 |
Research Abstract |
乳仔からの吸乳刺激は母ラットの弓状核(ARC)に入力しキスペプチン神経の抑制を介して性腺機能を抑制するが、その神経経路やメカニズムは明らかとなっていない。そこで、その神経経路に関与する伝達物質を調べるために、分娩後8日目の授乳ラットの脳幹における伝達物質の発現を、real-time RT-PCRを用いて、乳仔を取り除いた非授乳ラットと比較した。6種類の遺伝子を調べたところ、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の遺伝子であるcalaca1発現量が授乳ラットで有意に増加することが明らかとなった。そこで、授乳ラットの脳内におけるCGRP発現を免疫染色で調べたところ、脚周囲核(PP)や視床髄板内核(PIL)に強い発現が見られた。さらに、PPのCGRP神経が吸乳刺激で活性することをcFosとの二重免疫染色により発見した。 次に、PPのCGRP神経がARCに投射するのか、逆行性トレーサー用いて調べたが、PPからARCへのCGRP神経の投射は見られなかった。そこで、PPのCGRP神経がどこに投射するのか、順行性トレーサーであるビオチンデキストランアミン(BDA)をPPに投与して調べたところ、BDA陽性線維は尾状核-被殻(CPu)の尾側部に多く見られた。CPuには多くのCGRP神経が投射することから、PPからCPuに投射するCGRP神経が吸乳刺激の神経経路に関連するのではないかと考えている。 ARCにおける抑制因子の変化がキスペプチン抑制に関与すると考え、キスペプチン抑制因子であるダイノルフィンの遺伝子(PDYN)の発現をin situ hybridizationにより調べた。授乳と非授乳ラットのARCにおけるPDYN発現細胞数に差は見られなかった。キスペプチンとダイノルフィンは同じ細胞に発現するが、吸乳刺激はキスペプチン発現のみを抑制するシグナルであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画ではペプチドーム解析を考えていたが、解析から得られる結果の不便さや解析の困難さから方法を改め、real-time RT-PCRを用いた関連遺伝子をしぼった解析に変更した。その中で、CGRPという神経ペプチドが授乳期で増加することと、脚周囲核のCGRP神経細胞が吸乳刺激で活性化することを発見できたことは大きな進展であると考える。 一方で、発見した脚周囲核のCGRP神経の投射解析については、やや遅れている。脚周囲核から弓状核へCGRP神経の直接の投射が見られなかったので、尾状核-被殻を経由した間接的な投射を考える必要があると思われる。 吸乳刺激がキスペプチンとダイノルフィンを共発現する細胞において、キスペプチンの遺伝子発現のみを抑制することを発見できたことは大きな進展である。キスペプチン遺伝子の発現調節部位の解析から、吸乳刺激がキスペプチン神経細胞内で起こす変化を捉えられるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
脚周囲核のCGRP神経が尾状核-被殻を介して弓状核に伝わるのかを明らかにする。方法としては、弓状核に逆行性トレーサー、脚周囲核に順行性トレーサーを投与し、尾状核-被殻での両神経トレーサーの関係を免疫組織学的に解析して脚周囲核ー尾状核-被殻ー弓状核という神経回路を明らかにする。その後、その神経回路におけるCGRP神経の関連や尾状核-被殻から弓状核に投射する神経の特性も明らかにする。 また、CGRPが弓状核のキスペプチン発現に影響を及ぼすのかを調べるために、CGRPを脳室内投与したラットの弓状核におけるキスペプチン発現を免疫染色で調べる。 次年度予定していた実験の計画どおり遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していたプロテオーム解析を、real-time RT-PCR解析に変更したので、実験の遂行が少し遅れたため。 real-time RT-PCR実験により発見した脚周囲核のCGRP神経が、脳内にどのように神経投射するのかを調べるために、神経トレーサーもしくは動物の購入に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)