2013 Fiscal Year Research-status Report
カルコパイライト構造化合物の高熱電特性機構の解明と新規環境調和型材料への展開
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25870626
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小菅 厚子 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (30379143)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カルコパイライト / 熱電特性 |
Research Abstract |
本年度は、下記2項目について研究を行った。 (1)高い熱電特性を示す事が明らかになっているカルコパイライト構造化合物の結晶構造解析 ホットプレスにより作製したカルコパイライト構造化合物の固まり状の試料を作製し、室温にてX線回折法により得た実験データを、リートベルト法により解析した。その結果、カルコパイライト構造化合物に存在する2種類のカチオンサイトは、それぞれ単一のカチオン元素で占められているわけでなく、2種類のサイト間で元素の入れ替わり(アンチサイト欠陥)が一定量生じている事がわかった。粉末状の試料を固める際に、ホットプレスとは異なる手法を適用することで、アンチサイト欠陥を意図的に増やした試料を作製した。熱電特性にとって重要な物性である熱伝導率は大幅に低減することができたが、電気的特性は劣化してしまった。これには、2つの原因が考えられる。1つ目は、アンチサイト欠陥によりキャリア密度が増加し、ゼーベック係数が低くなったこと、2つ目は、アンチサイト欠陥により易動度が低下し、電気伝導率が劣化したことである。本研究により、カチオンサイトのアンチサイト欠陥が、カルコパイライト構造化合物の熱電特性に与える影響を明らかにする事ができた。 (2)環境負荷の低いカルコパイライト構造化合物の選定・合成条件の確立・高温での化学的安定性の評価 環境負荷の低い元素からなる新規カルコパイライト構造化合物の選定を行った。その際、毒性元素・希少元素を含まない元素を含む硫化物を中心に過去の文献を参考に選択した。それらの合成条件を合成し、高温での化学的安定性と熱電特性について評価した。本研究により、高温において、不活性雰囲気中だけでなく、大気中でも化学的安定な硫化物で、熱電材料としてのポテンシャルを有する化合物を見出す事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまで高熱電特性が明らかになっていたカルコパイライト構造化合物の結晶構造を詳細に解析し、それらの違いが熱電特性に与える影響を明らかにできた。また、来年度研究予定であった環境負荷の低いカルコパイライト構造化合物についても、同時に研究を進める事ができた点で、本年度の研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った結晶構造解析のデータをもとに、電子状態計算を行うことで、カルコパイライト構造化合物の輸送特性の理解をバンド構造の観点から深めていく予定である。さらに、バンド構造から得られた熱電特性高性能化への知見を、環境負荷の低いカルコパイライト構造化合物についても適用していくことで、本研究目標の達成を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算使用計画当初は参加予定であった国際学会に、他の予定との兼ね合い上、参加できなくなったため差額が生じた。 次年度生じた差額分については、研究用消耗品に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)