2013 Fiscal Year Research-status Report
タバコの致死性種間交雑における原因遺伝子および正常雑種高頻度出現現象の解明
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25870627
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
手塚 孝弘 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (20508808)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 雑種致死 / 種間雑種 / タバコ / 連鎖解析 / 突然変異 |
Research Abstract |
雑種致死は進化の過程で重要な役割を果たしてきたが、その一方で交雑育種を行う際の大きな障害であり、この現象を克服することが求められている。申請者は、タバコ栽培種Nicotiana tabacumと多くのタバコ野生種(Nicotiana属Suaveolentes節)との交雑では、N. tabacumが持つQ染色体上の遺伝子と、野生種が持つHLA1遺伝子座の優性対立遺伝子Hla1-1との相互作用により雑種致死が生じることを明らかにしている。本研究では、これらの原因遺伝子を解明することを目指している。また申請者は、特定のタバコ種間交雑組合せにおいて、雑種致死を生じる実生だけではなく、致死しない正常な実生も多数得られることを明らかにしており、本研究ではこのような正常雑種高頻度出現現象の解明も目指している。 本年度は、HLA1遺伝子型が分離するF2集団を用いてRAPDおよびSSRマーカーによる連鎖解析を行い、HLA1遺伝子座を連鎖地図上に位置付けた。一方、Q染色体上の遺伝子を解析するために、N. tabacumの種子をEMSで処理し、雑種致死を起こさない突然変異体を探索中である。また、タバコ属植物における雑種致死原因遺伝子の種類と分布を明らかにするために、多数の交雑組合せで種間雑種を作出し、雑種致死発現の有無を明らかにした。 正常雑種高頻度出現現象の遺伝解析を行うために、N. tabacumとの交雑で得た雑種実生において、ほぼ100%の致死性が生じる野生種と正常雑種が高頻度に出現する野生種とを交配し、F1雑種を得た。このF1雑種には稔性があり、N. tabacumと交配して種子を得ることができた。現在、種子を播種して正常個体と致死個体が分離するかを観察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、HLA1遺伝子型が分離するF2集団を用いてRAPDおよびSSRマーカーによる連鎖解析を行い、HLA1遺伝子座を連鎖地図上に位置付けた。一方、Q染色体上の遺伝子を解析するために、N. tabacumの種子をEMSで処理し、雑種致死を起こさない突然変異体を探索中である。また、タバコ属植物における雑種致死原因遺伝子の種類と分布を明らかにするために、多数の交雑組合せで種間雑種を作出し、雑種致死発現の有無を明らかにした。特定のタバコ種間交雑組合せにおいて認められる正常雑種高頻度出現現象については、予定していたDNAメチル化の調査には着手できていないが、遺伝学的に解析するための材料を作出することができた。以上のように、本年度の研究はほぼ当初の計画通りに進行しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によりHLA1遺伝子座の連鎖解析は順調に進んでいることから、今後は使用するDNAマーカーの種類や数を増やすとともに、必要に応じてF2植物の個体数も増やし、詳細な連鎖解析を行う。一方、Q染色体上の遺伝子を解析するために、N. tabacum突然変異体の探索を引き続き行う予定である。また、タバコ属植物における雑種致死原因遺伝子の種類と分布を明らかにするために、来年度も引き続きいくつかの交雑組合せで種間雑種を作出し、雑種致死発現の有無を明らかにする。 正常雑種高頻度出現現象の遺伝解析を行うために、N. tabacumとの交雑で得た雑種実生において、ほぼ100%の致死性が生じる野生種と正常雑種が高頻度に出現する野生種とを交配し、F1雑種を得た。このF1雑種をN. tabacumと交配して種子を得ている。来年度は、三系交雑により正常個体と致死個体が分離するかを観察する。正常雑種高頻度出現現象が認められた場合は、野生種間の交雑で得たF1植物を自殖してF2集団を作出し、遺伝解析を進める。遺伝解析が困難な場合は、正常雑種高頻度出現現象にエピジェネティックな現象が関与しているかを調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購入を予定していたビーズ式細胞破砕装置を、昨年度に別の研究費から支出して購入し、本年度に購入する必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。 連鎖解析の効率化を図るために、多数の検体を一度に処理できるアクリルアミドゲル電気泳動装置を購入する。また、連鎖解析等に使用する試薬等の消耗品に使用することを計画している。
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