2013 Fiscal Year Research-status Report
中国近代文学における白話文体形成とジャンル間影響:欧化・方言・文言吸収の諸相から
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25870629
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
津守 陽 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20609838)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 沈従文 / 文体 / 感覚表現 / 風景描写 / 象徴 / 自然 / モダニティ |
Research Abstract |
本年度は後半に育児休暇を取得したため、主に(1)沈従文の文体意識と文学表現に関する掘り下げ(2)書籍購入を中心とした資料収集の二点を行った。 (1)では1940年頃の昆明移住を境に大きな作風の転換を迎えたとされながら、作品内容が晦渋であるため研究が難航してきた沈従文の昆明時期作品を対象に、視覚・聴覚表現を切り口にシンポジウム報告を行い、論文にまとめた。1930年代の作品群に比べ、この時期の沈従文は文体意識と抽象表現獲得への追求がいっそう鋭く表出してくる。論文では彼の視覚・聴覚を駆使した描写への執拗な探求が、苦しい彷徨を経て「自然≒音楽」に対する宗教的帰依へ逃避的に向かうことを指摘した。そしてこの葛藤が従来政治的要因にまとめられがちであった沈従文の自殺の一因を内的に形づくっていること、彼が小説と散文のあわいに求めた抽象表現への追求は、「象徴」をめぐる民国詩壇の重要な追求とも大きな関連を持っていることを明らかにした。論文は後期沈従文研究および中国文学とモダニティの問題に大きな貢献を行ったと評価され、第10回太田勝洪記念中国学術研究賞を受賞した。 (2)では、(1)の過程で沈従文の文体探求に密接な関わりを持つことが明らかになった現代詩の課題を考察するため、梁宗岱・卞之琳・馮至・辛笛ら詩人の資料を中心に収集した。次年度以降で読み込みを進め、現代詩の課題と小説文体形成の関連を考察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
妊娠・出産を経たため、本年度を通して長期出張や海外出張が難しく、国外での資料収集やシンポジウム報告は行えなかった。また後期は育児休暇を取得し、書籍購入以外の研究活動は遅滞せざるを得なかった。このため、新しい資料の読み込みは遅れている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は以下の三つの柱を中心に、小説文体形成に働いたダイナミズムを考察する。 (1)沈従文の文体形成の過程と達成を、新詩人との交流と影響・「大衆語論争」などの文体議論との相関・実作における文言的リズム吸収の諸方面から整理する。 (2)民国期の詩壇で数々の議論が交わされた、五感描写の探求や感覚間の相互影響といった重要課題を整理し、小説との相互影響をみる。 (3)散文・小品文における文言吸収の様相を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
後期に育児休暇を取得したため、資料購入費および旅費の使用が予定よりも少なくなった。 本年度行うはずであった、海外を含む資料収集および学会報告の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)