2016 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the formation of colloquial Chinese in modern fiction and the interaction among literary genres: from the viewpoints of the westernization, the impact of dialect and classical Chinese
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25870629
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
津守 陽 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20609838)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 沈従文 / 文体 / 詩化/散文化 / 文学形式 / 文学ジャンル / ジェンダー / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の成果としては、2度の学会発表と2本の学術論文(うち1本は次年度刊行予定)により、沈従文の詩論の整理を行うとともに、彼の描写技法の背後にあるジェンダーやナショナリズムをめぐるポリティクスを論じた。 これを踏まえ、研究期間全体における成果は、以下の3つに分けられる。 (1)小説家や散文家として知られる沈従文の詩論に焦点をあて、その論旨を整理し近代の詩論群の中に位置づけた。その際、詩論単独としての達成度よりも、沈従文の小説の「詩化」現象への影響に重点を置いて議論し、彼が評論活動を通して、次第に「文字」と「生命」を中心とする独自の文学観を強化し、後期の「抽象」追求へと進んでいった、という軌跡を描き出した。これにより、民国後期の文体的成熟と実験性を代表する「詩化小説」群が生み出された背景に、新文学教育や文芸評論の制度的成立と、ひとりの作家が主流イデオロギーと対峙する中で記した、「詩/散文/小説に固有の形式とは何か」というジャンルの境界を注視する評論群の存在があったことを示唆した。 (2)文体作家(Stylist)と呼ばれた沈従文について、あくまで外形の描写にこだわる沈従文のフェティシスティックな眼差しが、近代における身体性および地方性・都市性とどのように関わっているかについて、ジェンダー論の立場から明らかにした。またこれを通して、彼の技法が、「語り得ぬ他者」を描くという試みのうえで、大きな今日的意義を有していることを指摘した。 (3)「文学形式」に関心を持つ国内外若手研究者のグループを立ち上げ、継続的な共同研究のための基礎を築いた。今後も年に2回のペースで連続ワークショップを開催し、論文集を公刊する予定である。 沈従文以外の作家を含む文体史の見通しについては、残念ながら本研究の期間中に具体的成果を刊行するには至らなかった。本研究を土台とし、次年度以降の継続課題としていきたい。
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Research Products
(8 results)