2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870634
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
堀井 謹子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80433332)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ペリニューロナルネット / 視床下部 / エンケファリン / ストレス / 外側中隔 / コンドロイチン硫酸プロテオグリカン / カルレチニン |
Research Abstract |
本研究は、申請者らが最近発見したマウス視床下部の新規領域(仮称デルタ神経核)における神経ネットワークと生理機能を明らかとすることを目的としている。本領域は、視床下部室傍核と脳弓の狭間、視床下部前核の背側に位置し、ペリニューロナルネットと呼ばれる特殊な細胞外マトリクスに覆われたニューロン集団を含んでいる。H25年度は、以下のような研究成果が得られた。 【デルタ神経核の遺伝子発現と神経細胞種同定】本領域に発現する神経伝達物質合成の関連遺伝子についてDNAマイクロアレイを用いてスクリーニングを行い、また各種神経細胞マーカーを用いて免疫組織化学による確認を行った。その結果、デルタ神経核には少なくとも、GABA陰性のエンケファリン陽性ニューロンとカルレチニン陽性ニューロン、GABA陽性(抑制性)ニューロンの3種が存在することがわかった。 【神経ネットワーク】神経ネットワーク解析の結果、本領域は外側中隔、視床下部腹内側核、背側乳頭体前核と相互に線維連絡を有することが明らかとなった。また、本領域に存在するエンケファリン陽性神経細胞は外側中隔に投射し、逆に外側中隔のGABA作動性カルビンディン陽性ニューロンが本領域に投射していることも確認された。 【生理機能】c-Fosタンパク質の発現を指標として様々な生理的刺激やストレスに対する神経細胞の応答性を調べた結果、本領域の神経細胞は新規環境暴露や拘束、攻撃行動といった心理的ストレスを伴うような刺激に対しては応答するが、絶食、摂食、絶水、飲水、血中ナトリウム濃度の上昇による高浸透圧刺激のような恒常性維持に影響する刺激に対しては応答を示さなかった。 これらの結果から、本領域は、視床下部内の特定領域と神経連絡を持つ他、辺縁系である外側中隔とも相互に繋がりがあり、ストレスや情動に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階において、デルタ神経核を構成する神経細胞の種類と神経伝達物質についての情報はは概ね得られたと考えている。また本領域と神経線維連絡がある脳部位についても同定済みである。また、生理機能に関しては、c-Fos発現を指標とした結果ではあるが、デルタ神経核ニューロンは、情動変化を伴うような刺激(心理的ストレス)に対して顕著な応答性を示すことがわかってきた。現在得られているこのような情報は、本研究目的の達成にあたって重要な基礎的データであり、今後の方策を決定するにあたって重要な手がかりとなっている。このような理由から、今年度の研究計画はおおむね予定通り実行できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、デルタ神経核の機能解明に向けて、まずは本領域と情動との関連性を明らかとしていく。申請当初は、本視床下部領域が摂食と関連している可能性を想定していたが、その後の実験結果により不安等の情動との関わりが示唆された。よって、まずは本領域のニューロンをイボテン酸等の局所注入によって破壊したマウスを用いて、不安様行動への影響について種々の行動試験(オープンフィールドテスト・明暗箱テスト・高架式十字迷路)により調べる。また、Cre recombinase依存的にchannel rhodopsin 2を発現するTgマウスを用いて、オプトジェネティクスによりデルタ神経核ニューロンを刺激し行動を観察する。さらに、シナプス形成・維持におけるデルタ神経核ペリニューロナルネットの役割解明に向けて、コンドロイチナーゼABCの局所注入によるペリニューロナルネット破壊実験を行い、上述の行動試験に加え、興奮性および抑制性シナプスマーカータンパク質の発現変化についてウエスタンブロッティングと免疫組織化学により解析を行う。
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Research Products
(9 results)