2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870639
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
グホ サビン 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (30453179)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高血圧 / 循環調節中枢 / 炎症 / 神経栄養因子 / アストロサイト |
Research Abstract |
神経性高血圧の発症機序は未だ不明である。しかし、多くの症例において交感神経活動の賦活化が報告されており、その機序の一部は脳にあると考えられている。本研究では、神経性高血圧発症の機序について分子細胞レベルで調べることを目的とした。 平成25年度は、高血圧動物モデルであるspontaneously hypertensive rat(SHR)の孤束核において神経系の発達や機能に直接影響を及ぼし、且つ、炎症性因子やアポトーシス関連因子と相互作用を有する神経栄養因子の遺伝子発現について詳しく調べ、更に異常発現を認めた分子の循環調節作用についても調べた。また炎症性因子として、SHRの孤束核で過剰生成のみられるロイコトリエンB4(LTB4)に着目し、LTB4がラットの孤束核、および培養アストロサイトの遺伝子発現に及ぼす影響について調べた。 SHRの孤束核では、神経栄養因子に分類されるHcrt(prepro-orexin)など複数の遺伝子に発現異常を認めた。また機能実験により、SHRの高血圧発症には孤束核Hcrt遺伝子発現低下が一部寄与している可能性が示された。また、孤束核内へのLTB4投与、および市販のラット培養アストロサイトへLTB4を添加することにより、Ccl5やHO-1など神経調節因子としての作用を有する炎症性因子の発現変動を認めた。これらの結果は、少なくともLTB4過剰生成に依存した高血圧症では、孤束核内アストロサイトを介した炎症反応が孤束核機能の異常とそれに伴う神経性高血圧の発症に関与している可能性を示唆している。また、平成25年度は、SHRとWKYの孤束核を含む尾側延髄背側部から、アストロサイトを単離し、初代培養を行った。線維芽細胞の混在を如何に少なくするかが重要であり、既知のプロトコールを改変することにより、より純度の高い初代培養技術を確立することができた。今後はSHR由来のアストロサイトを利用し、高血圧発症の分子機序についてより詳細に調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究実施計画」に記載した実験を概ね遂行することが出来た。ラットを用いた実験では、孤束核に発現し、高血圧発症に関わる新規の候補遺伝子を分子生物学的、機能的に同定することができた。SHRとWKYの孤束核由来アストロサイトの初代培養は予想以上に困難であった。既知のプロトコールを用いた場合、線維芽細胞の混入が見られたが、工夫を重ね改変することにより、より純度の高いアストロサイト初代培養を得ることができた。但し、平成25年度はこの細胞の分子生物学的特徴を詳細に調べるには至らなかったので、平成26年度に継続して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は初代培養細胞を用いた実験を中心に行う。先ず、LTB4がSHRおよびWKYの培養アストロサイトの遺伝子発現に及ぼす影響について調べる。特に、炎症性因子、アポトーシス関連因子、そして神経栄養因子の遺伝子・タンパク質発現に及ぼす影響につい て調べる。また、発現変動を認めた分子が、培養神経細胞へ及ぼす影響について受容体タンパク発現やc-Fos発現などを調べることにより検討し、アストロサイト-神経細胞間コミュニケーションを媒介する因子を明らかにする。更に、麻酔下ラットの孤束核に同定された分子を直接投与することで、その循環調節作用についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね計画通りに研究費が使用されたが、アストロサイト初代培養実験が予想以上に困難であったことなどにより、次年度使用額が僅かに生じた。 次年度も引き続き、分子生物学的実験および生理機能実験を行うので、主としてそのための消耗品費として使用する。
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Research Products
(3 results)