2014 Fiscal Year Research-status Report
第四紀埋没火山灰を用いた数千年規模の土壌炭素蓄積機構の解明
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25870653
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
保原 達 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (70391159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 火山灰 / アミノ酸 / 埋没土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、まず25年度から進めている火山灰土壌中の有機物分析、特にアミノ酸分析を継続して進めた。そして様々な年代の火山灰土壌中の有機物のアミノ酸組成に関する結果の解析などを行った結果、火山灰土嬢へ蓄積した有機物は、年代とともに、各種アミノ酸の構成比率が一定の方向へ変化することを見出した。特に、ロイシン/グリシン比において、古い埋没土壌から新しい有機物になるにつれ、比が徐々に低くなる傾向が見られた。こうした傾向はアミノ酸組成全体的に見られ、微生物代謝、エントロピー、化学平衡的などの影響による可能性が示唆された。 次に、苫小牧市などにおいて採取された第四紀火山灰試料を使用して、土壌への炭素蓄積を見る培養実験を行った。特に、火山灰に植物粉を与え、25度の温度、最大容水量50%(土壌)の水分下で、火山灰に徐々に炭素が増えていく過程の土壌を採取して化学分析を行った。その結果、抽出性の炭素の分子量が、1週間ほどの非常に短期間のうちに劇的に変化し、8000Daほどの大きさの有機物に徐々に収斂してゆく傾向が見られた。また、その後は、その炭素の分子量はあまり変わらず、大きな変化を見せなかった。これには、微生物的な代謝の指数関数的変化が関わっていることが示唆された。 これらの研究結果は、日本地球惑星科学連合(JPGU)連合大会2014年大会にて、「様々な環境条件下の分解過程で生成される微生物由来有機物にみられる生化学的共通性」という題目にポスター発表した。陸域のみならず、海洋の研究者などからも、有機物分解の普遍的プロセスとその長期的変化の傾向の共通点などについて、多くの議論をすることができた。また、現在これらの解析結果を論文として国際雑誌に投稿すべく、執筆を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定となっていた、抽出性の土壌有機物の質的な影響について把握したほか、学会発表や論文執筆などを、適宜進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、主に過去の埋没火山灰を用いて、そこへの炭素蓄積に関する知見を得てきたが、その埋没年代によって蓄積様式が異なる可能性が出てきた。そのため、非常に新鮮な火山灰における有機物集積についても調査、解析を試みる。北海道周辺では、降ったばかりの新鮮な火山灰を多量に採取することは困難なため、新鮮な火山灰を採取できる桜島にて火山灰を採取し、新しい火山灰を用いた実験について行い、これまでの結果と比較する。また、現在まとめている論文を投稿するほか、同様にまとめている内容を学会発表したり、さらに論文として新たにまとめることを予定している。
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Causes of Carryover |
実験のうち、機器分析が、当該年度に実施できなかった部分が多かった。そこで、機器分析にかかる消耗品の購入を次年度にすることとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度使用予定だった機器分析(特にアミノ酸分析、分子量分析、TOC分析)において、機器分析にかかる消耗品購入のために使用する。
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Research Products
(1 results)