2013 Fiscal Year Research-status Report
注意分散が高齢者の一側上肢外転運動時の感覚運動処理と予測的姿勢制御に及ぼす影響
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25870656
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
矢口 智恵 北海道文教大学, 人間科学部, 助教 (00612300)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 注意分散 / 上肢外転運動 / 予測的姿勢制御 / 感覚運動処理 / 高齢者 / 事象関連脳電位 / 筋電図 |
Research Abstract |
高齢者の平衡機能の低下に影響を及ぼす要因の一つとして、注意分散能がある。本研究では、高齢者の注意分散能が脳内の一連の神経処理過程に及ぼす影響およびその神経処理の変化と姿勢制御との関係を総合的に検討する。 本年度は、健康高齢者16名を対象に実験を行った。実験では、上肢運動の有無を指示する視覚命令刺激が、左、右あるいは中央の3か所のうちどれか1か所に出現した。被験者は、命令刺激の出現前にそれの出現位置を示す手がかり信号に従い、注意を1か所に集中するか、3か所に分散した。いずれの出現位置であっても命令刺激が標的刺激であった場合に、右上肢を最大速度で外転した。課題中の事象関連脳電位、筋電図(局所筋である右の三角筋中部線維および姿勢筋である左の脊柱起立筋と中殿筋)および足圧中心位置を記録した。 事象関連電位については、命令刺激の感覚処理の指標であるP1およびN1成分、弁別処理の指標であるN2成分、および高次の認知処理の指標であるP3成分の振幅と潜時、および命令刺激出現前の運動準備やその刺激に向けての予測的注意の指標である後期CNV電位を、注意状態別に分析した。筋電図については、標的刺激出現に対する三角筋の反応時間と三角筋に対する姿勢筋の活動開始時間を分析した。 P1、N1およびP3成分には、注意分散の影響が認められなかった。N2振幅および後期CNV電位は、注意分散により有意に小さくなった。また、三角筋の反応時間は遅延し、姿勢筋の活動開始時間は遅くなった。 これらの結果から、次のことが明らかとなった。高齢者は注意分散時であっても、感覚処理には、多くの注意を向けていたが、その後の高次処理である弁別処理や運動準備には十分な注意を向けることができなかったと考えられる。このような制御の違いにより、三角筋の反応時間が遅れ、かつ上肢運動時の姿勢筋の活動開始タイミングが遅くなったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には、実験の実施と事象関連脳電位の分析を行う予定であった。しかし、実際には平成26年度に実施を計画していた筋電図の分析まで行うことができた。 これは、分析補助を依頼することができたため、予定していたよりも事象関連電位や筋電図の分析にかかる時間が短縮したことによると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、上肢運動による姿勢の崩れの程度の指標である足圧中心位置の移動量について分析を行う。床反力計データを用い、三角筋のバースト開始の-300 msから-150 msの150 msの間と、上肢運動の停止時点から150 ms間の2つの区間に対して足圧中心の平均位置を算出する。上肢運動の停止時点は、三角筋の第二バーストの終了時点として定める。三角筋の終了時点は、包絡線に含まれる波が最初に上肢を下ろす直前の500 ms前の平均値+2SDを下まわる点として定義する。これらの平均位置間の差を、足圧中心位置の移動量と定める。 また、命令刺激に対する誤反応率も算出し、注意分散による課題の正確性の評価も行う。標的刺激に対して三角筋のバースト活動が無いものを見落とし試行、非標的刺激に対してバースト活動があるものをお手つき試行とし、全試行数に対するこれらの試行数の比率を誤反応率として算出する。 これらの得られた知見について学会発表や論文の執筆・投稿を行う。本研究により、高齢者の一側上肢運動時の注意分散能が視覚の感覚・知覚・認知、および運動準備処理に及ぼす影響を総合的に評価できると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の交付決定額を使い切るような計画で研究を遂行していた。しかし、研究協力者である金沢大学の藤原勝夫教授との打ち合わせのための旅費について、1月から3月は旅費が安い時期であったため、通常1回に5~6万円かかる旅費が2~3万円であったことが2回あった。したがって、その差額が次年度使用額となった。 平成25年度は、月に1回の頻度で金沢大学の藤原教授と打ち合わせを行っていた。本年度は、分析が終了し、論文執筆作業に入る予定であるため、同じ頻度で研究打ち合わせを行う必要性があると考えられる。また、得られた成果を国際学会で発表する予定である。したがって、これらの旅費および論文作成時の消耗品、英語論文校閲費および論文投稿料として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)