2017 Fiscal Year Annual Research Report
For realization of an inclusive society subsuming every "difference": A historical study of Canada
Project/Area Number |
25870664
|
Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
下司 優里 流通経済大学, 社会学部, 准教授 (40615738)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | カナダ / オンタリオ州 / 知的障害 / インクルージョン / 共生社会 / 補助学級 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終年度である平成29年度は、次の研究作業を行った。①これまで収集した史資料の分析を通して、20世紀のカナダにおいて知的障害者に対してどのような問題意識があり、いかなる目的と方法においてこの問題に対処しようとしたのかについて考察を深めた。②研究集会への参加や電子メールでの意見交換を通じて、カナダおよび日本の関係研究者と本研究の考察の妥当性について検討した。③国内学会における研究発表および学術雑誌への論文投稿を通して、本研究成果の発信を行った。 本年度は、カナダでも典型的かつ代表的地域のひとつであるオンタリオ州を取り上げ、知的障害児への公教育が保障されてゆく経緯を追究し、研究成果として次のことが明らかとなった。 オンタリオ州における知的障害児の教育保障は、1914年の補助学級法の制定に始まり、その後軽度知的障害児を対象とした補助学級は急速に拡充された。そして1930年代後半、教育省は補助学級と通常学級との連続性を意識し、学級名を改称するなどして、教育機会の平等を追求した。しかしながら、補助学級の教育対象はあくまで学業不振児あるいは軽度知的障害児であった。 1940年代に入り、中度知的障害児の教育保障に中心的役割を果たしたのは、補助学級教員と障害児の保護者であった。補助学級教員主導の下、彼らは結束し、オンタリオ州精神遅滞者協会(OAMR)として自ら知的障害児のための学校を設立・運営していく。1960年代は同学校の公立化、続く1970年代は障害の状態や所属する学校種によらない就学を実現させるべく尽力した。さらに、教育委員会における綿密な個別アセスメントの実施、適切な学びの場の決定、そのプロセスへの保護者の参画を指向したOAMRの要請を実現させる形で、障害のある児童生徒への公教育を義務化した1980年改正教育法が制定されたことは、同州におけるインクルージョンの画期として注目される。
|
Research Products
(3 results)