2013 Fiscal Year Research-status Report
地域貿易協定が貿易救済措置の運用に与える影響に関する実証分析
Project/Area Number |
25870672
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
宋 俊憲 東京国際大学, 商学部, 准教授 (40585527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地域貿易協定 / アンチダンピング措置 / 補助金相殺措置 / セーフガード / 貿易調整支援制度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、地域貿易協定の締結が、アンチ・ダンピング措置やセーフガード等の貿易救済措置の運用にどのような影響を与えるかを実証分析し、地域貿易協定の中に制度的な安全弁を設けることの意味と効果について考察することである。そこで、研究初年度の平成25年度には、次のような研究実績を得ることができた。 第1に、貿易救済措置の中で最も発動件数が多いアンチ・ダンピング措置に注目し、当該措置が貿易の流れに及ぼす効果を計量的な手法に基づいて分析した。そこで。日本と韓国の発動事例を用いて分析した結果、アンチ・ダンピング税が賦課されても輸入減少効果が輸入転換効果によって相殺されたことが明らかになった。 第2に、地域貿易協定の新たな貿易救済措置を模索する中で、貿易調整支援制度(TAA)の利用可能性について注目した。そこで、韓国のTAAの内容と運用状況について検討しながら、地域貿易協定の締結で被害を受ける国内産業を救済・支援するための制度的枠組みと政策手段について考察した。残念ながら、韓国のTAAは、代表的な政策失敗事例として指摘されている。本研究の結果は、貿易自由化の拡大に伴う国内産業の被害が懸念される中で、更なる市場開放が求められる日本に新しい国内支援制度のあり方について示唆するものが多い。 第3に、世界の主要な地域貿易協定の中に盛り込まれているセーフガード条項を調べる中で、これまで日本と韓国が締結した自由貿易協定及び経済連携協定の一般セーフガードと二国間セーフガードを比較分析した。日本と韓国は、これまでの地域貿易協定の中に一般セーフガードと二国間セーフガードに関する規定を導入しており、貿易自由化に伴う輸入急増から国内産業を保護している。しかし、その運用方法においては、両国に大きな差が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の平成25年度には、アンチ・ダンピング措置、補助金相殺措置、セーフガードの3つの措置について、(1)TPP加盟国及び参加表明国における制度的特徴、政策方針、発動状況について調査し、(2)WTO協定との整合性や日本の貿易救済措置と比較分析する計画であった。幸いに、世界の主要な地域貿易協定におけるアンチ・ダンピング条項やセーフガード・ルールを調査した報告書や資料が、世界貿易機関や経済産業省等から発行されており、調査・研究の負担が非常に減少した。この制度分析に基づき、平成26 年度に行う実証分析の土台として、モデルの構築の際に必要かつ重要なヒントを得ることができると考えられる。現在、本研究に関連する先行研究-主に地域貿易協定と貿易救済措置に関する研究-の確保と把握は大体終了し、分析モデルの構築と統計分析に必要なデータセットの作成に着手する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26 年度には「計量分析」に重点を置き、地域貿易協定の締結と貿易救済措置の運用との因果関係を明らかにする。特に地域貿易協定における貿易救済措置の合意内容が、実際に貿易救済措置の運用にどのような影響を及ぼすのか実証分析する。これからは、まず、WTOの統計資料や世界銀行『Temporary Trade Barriers Database』などの関連データベースから分析に必要なデータを収集・加工する予定である。そして、計量分析を行うために欠かせない統計ソフトの使用方法と統計分析方法を熟知する必要もある。 その一方で、次のような課題も明らかになってきた。まず、計量分析を行うためには、十分なサンプル数を確保する必要があるものの、TPP加盟国及び参加表明国のみを分析対象に限定した場合に、満足できる結果を得られない可能性も否定できない。同じく、アンチ・ダンピング措置の調査及び発動件数は非常に多い一方で、補助金相殺措置やセーフガードの実績は比較的に少ない。今後、分析対象の選択については、先行研究が参考しながら、統計的に有意な因果関係を導くことができるように模索したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果として予定した論文投稿の費用を計上したが、論文の修正及び作成に予想以上の時間が必要となり、次年度(平成26年度)に投稿を延期することになった。 平成26年6月に韓国関税学会で開催される夏季学術発表大会で研究成果を報告し、その後報告論文を学会誌に投稿する予定である。次年度使用額は、論文を投稿する際に支払う投稿料として使用したい。
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