2016 Fiscal Year Research-status Report
大学生の学校適応促進要因の解明と登校支援プログラムの開発
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25870684
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
加藤 陽子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (40409701)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 登校行動持続要因 / 学生相談 / 大学生 / 学校不適応 / 不登校 / 登校支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大学生の登校行動持続要因を検討するとともに,学校適応のための支援モデルを検討することを目的としている。そのために,本年度は大学生を対象として不足しているデータ分として,「登校行動を維持・持続させる要因」に関するデータ約300名分の収集を行った。具体的には,首都圏私立4年制大学の学生のデータを収集し,研究協力を依頼した研究者や大学院生など研究支援者の支援を得ながら,データ化,分析を行った。 これまでの研究成果としては,登校行動持続要因の保有数が少ないほど登校回避感情が高まり登校率が低くなるが,登校回避感情が高い場合でも持続要因を多く保有していれば登校率が維持される傾向にあることが明らかになっている。そこで,本年度は昨年度に引き続き”登校行動持続要因の保有数に影響を与える要因”すなわち”登校行動維持に影響を与えうる潜在的要因”について検討することとした。 得られたデータの分析は多岐にわたるが,本年度の主な成果として精神的回復力と登校行動持続要因との関係があげられる。分析の結果,精神的回復のうち,「新奇追求」と「肯定的な未来志向」が登校行動持続要因の保有数を介し,出席率と登校率を高めることが明らかとなった。すなわち,精神的回復力の中では,興味関心の多様性を示す「新奇追求」や将来の見通しは明るいと感じるなどの「肯定的な未来志向」が高い者ほど,登校行動を多く保有しており,登校率,出席率を高めるといえるだろう。なお,「肯定的な未来志向」は,保有数を介さずに直接出席率を高めることも示された。したがって,精神的回復のうち特に有効な「肯定的な未来志向」に働きかけることが,登校行動持続のためには有効であるといえる。 なお,この結果は日本教育心理学会などで発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,研究協力を依頼した研究者や大学生などに協力を仰ぎながら,不足していたデータの収集,データの整理を行うことができた。 また登校行動持続要因の保有数に与える要因の検討を行ったところ,精神的回復力と保有数との関連において,将来の見通しは明るいと感じるなどの「肯定的な未来志向」が高い者ほど,登校行動を多く保有しており,登校率,出席率を高めることが明らかとなった。こうした結果は,次年度以降の介入支援モデル作成の際に役立つと考えている。 以上のように,登校行動維持のために必要な情報を集めることができた。しかし,当初本年度の目標としていた時系列重回帰分析を行うには至らなかった。これは,申請者が産休に入ると同時に体調不良により年度途中で思うように研究に取り組めなかったことが原因と考えている。分析のフレームワークは申請者のみが理解しており,一人で遂行する予定でいたため,収集や分析をその他研究協力者に依頼するわけにもいかず,分析が滞ってしまった。そのため,研究の進捗がやや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,次年度の介入調査に向けて,まずは滞っている分析を急ピッチで進めていく。特に,登校行動持続要因の保有数がどのように変化しうるのか,長期的かつ時系列的な変化を検討する。加えて,これまでの分析をまとめて,登校行動を維持させるためのモデルを構築する。さらに,得られたデータおよびモデルをもとに,これまで関係を構築してきた相談機関と連携し,アドバイスを受けながら介入モデルを精査する。得られた成果は引き続き,「日本心理学会」や「日本教育心理学会」において発表する。また,同学会誌や十文字学園女子大学人間生活学部紀要などへも投稿する。
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Causes of Carryover |
年度途中で産休に入ると同時に,申請者の体調不良により急遽研究を中断せざるを得ない事態となり,データ収集およびデータの整理が遅れ,人員を思うように集められなかった。また,情報収集,発表のために参加予定であった学会などにも参加できなかったものがいくつかあった。さらに,当初更新予定であった統計分析ソフトなどが年度内に購入できなかったことなどもあり,当初の予算処理ができず,次年度使用金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の目標をクリアするために,次年度は早々に協力を仰ぐための人員を募集し,調査分析を行う。そうすることで,早めに予算使用の見通しが立ち,厳正な予算処理が可能である。学会参加についても,積極的に足を運び,最新の分析手法などの情報収集に当たる。また,更新予定であった統計ソフトも最新版の購入などを検討する。
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Research Products
(1 results)