2013 Fiscal Year Research-status Report
江戸期日本における中国戯曲受容史及び唐話学と文学創作との関係
Project/Area Number |
25870690
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
及川 茜 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (40646725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国戯曲 / 白話小説 / 都賀庭鐘 |
Research Abstract |
本研究は読本の鼻祖と目される都賀庭鐘の作品を切り口に、江戸期日本における中国戯曲受容史と、唐話学と文学創作との関係の探究を通じ、自分の属さない世界を想像し描き出すという営為に絡め、非母語による文学活動という現代にも通じる現象に近世の角度から光を当てることを目的とする。 初年度にあたる本年度は、基礎作業として主に先行研究の精査を行った。 まず、日本における中国戯曲の受容史を中心に、当時の文献資料の収集並びに分析を行った。芝居として実際に上演されたことが確認されているのは長崎の唐人屋敷においてであるため、既に知られる上演以外の当時の公演に関する記録を求め、文献資料の収集と整理作業から始めた。その作業に加え、2月23日から3月2日までの8日間にわたり長崎県立長崎図書館及び長崎歴史文化博物館に於いて調査を行った。この際に長崎県立長崎図書館にて4点、長崎歴史文化博物館にて44点の資料を閲覧し、うち40点を複写した。これらの資料については次年度に引き続き整理作業を行い、中国演劇の実際の上演に限らず、中国戯曲全般に関する記述を洗い出すものとする。 同時に、清楽に関する先行研究を調査した。当初の計画では、中国側の地方戯に関する研究とリンクさせる予定であったが、今年度は清楽に関する先行研究の整理作業を行ったのみで、地方戯との関連にまで至ることはできなかった。 これらの作業の過程で、中国演劇は戯曲テキストの形で読み物としての側面から受容されていたことに加え、音楽の受容に関しても詳細な検討が必要であることが明らかになった。特に、清楽と戯曲との関係は次年度に引き続き考察が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は①江戸期の文献資料の収集並びに分析 ②清楽に関する先行研究の調査 ③唐話学習の目的や手法について唐話学関連資料の記述の抄出の三点について整理作業を行い、その上で得られた知見を発表する予定であった。しかし、基礎作業に当たる①②の段階に予想以上の時間を費やしたため、③の段階に進めず、成果の発表にまで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
中国演劇の江戸期日本における実際の上演に関して、今年度はまず長崎唐人屋敷について調査を行ったが、現段階では当初の予想に比して成果が充分であるとはいえない。また、唐人屋敷での上演は極めて限定的であったため、実際の上演に関する調査では新たな成果を得るのが難しいことが判明した。 これを受けて次年度は、日本での上演の実態から、文学作品の中で日本の作家がどのように中国戯曲を想像したかに関する分析へと、調査の重点を移す予定である。従って、主に中国戯曲の日本における翻案・翻訳作品をめぐるテキスト分析から着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時に購入を予定していた高額書籍のうち、古書価の変動により当初の予算内での購入が困難なものがあったため、今年度の購入は見送った。 当初の予定より一年遅れとなるが、当該の書籍が入手可能となり次第、次年度予算と合わせて購入に充当する予定である。
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