2014 Fiscal Year Research-status Report
江戸期日本における中国戯曲受容史及び唐話学と文学創作との関係
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25870690
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
及川 茜 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (40646725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国戯曲 / 白話小説 / 都賀庭鐘 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は読本の鼻祖と目される都賀庭鐘の作品を切り口に、江戸期日本における中国戯曲受容史と、唐話学と文学創作との関係の探求を通じ、自分の属さない世界を想像し描き出すという営為に絡め、非母語による文学活動という現代にも通じる現象に近世の角度から光を当てることを目的とする。 二年目に当たる本年は、初年度に予定していた範囲の調査が終わっていなかったため、特に清楽に関する先行研究を調査し、中国演劇でうたわれた曲の日本での享受について既に明らかになっている部分を確認する作業から始めた。その結果に基づき、中国演劇の日本における上演の実態を明らかにすることを試みた。 江戸期の長崎及び琉球における中国演劇の受容について調査する過程で、上演されていた劇が浙江省・福建省の地方戯である可能性が確認された。そのうち、今回は福建省の地方戯を中心に ①博物館等の収蔵資料を調査し ②実際の上演を見ることを目的とした。日程と調査地は、福清市(2月21-23日)、泉州市(同23-26日)、福州市(同26-3月1日)、廈門市(同1日-3日)であり、主な訪問施設は①華僑歴史博物館・海洋交通博物館・泉州博物館・以上泉州)、福建省非物質文化遺産博覧苑(以上福州)、廈門市博物館・厦門大学・華僑博物館(以上廈門)②黄檗山萬福寺・石竹寺(以上福清)、府文廟・南音芸苑・梨園古典劇院・泉州木偶劇場・玄妙観(以上泉州)、芳華戯院・烏山古建築群(以上福州)などである。 なお、三月にはこれまでの成果をまとめ、『世界文学・語圏横断ネットワーク 第2回研究集会』において「未知なる舞台への想像、話せぬ言語への翻訳―都賀庭鐘『四鳴蝉』をめぐって」と題して口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は①中国での現地調査、②『過目抄』以外の同時期の日本の随筆・筆記にみられ中国戯曲・日本演劇に関する記載の調査、③中国戯曲の翻案・翻訳作品について考察を行う予定であった。しかし、前年度の遅れにより、当初予定の範囲としては上記の①のみしか達成できていない。 また、特に資料収集に関しては、所属先の授業の休みの日と、所蔵機関の閉館日が重なる場合が多く、なかなか思うように遂行することができない。初年度に比べて校務の負担が増えたこともあり、遅れを取り戻せるだけのまとまった時間を研究に当てることも難しい状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
中国演劇の日本での享受に関して、長崎(唐人屋敷)及び琉球の二方向から調査を行った。ただし、資料分析にあたり、日本・中国それぞれの演劇に関する知識がいまだ不足であることが判明した。 中国での現地調査を遂行するため、初年度の計画を受けて日本での上演の実態を少しでも解明しようと試みたが、今後は残りの期間から逆算し、中国戯曲受容史の中でもテキストとしての側面からの受容を考察することに重心を移したい。
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Causes of Carryover |
請時に購入を予定していた高額書籍のうち、古書価の変動により当初の予算内での購入が困難なものがあったため、初年度に購入を見送った分の繰り越しである。今年度も状況は変わらなかったため購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定より2年遅れとなるが、当該の書籍が入手可能となり次第、次年度予算と合わせて購入に充当する予定である。
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