2015 Fiscal Year Annual Research Report
江戸期日本における中国戯曲受容史及び唐話学と文学創作との関係
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25870690
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
及川 茜 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (40646725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 白話小説 / 中国演劇 / 中国戯曲 / 都賀庭鐘 / 徐渭 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は読本の鼻祖と目される都賀庭鐘の作品を切り口に、江戸期日本における中国戯曲受容史と、唐話学と文学創作との関係の探求を通じ、自分の属す世界の外側を想像し描き出すという営為に絡め、非母語による文学活動という現代にも通じる現象に近世の角度から光を当てることを目的とする。 最終年度に当たる本年は、過去二年間で行った現地調査で得られた資料の分析を行うと同時に、日本・中国の演劇について考察を進め、明和八年(1771)刊の『四鳴蝉』および安永十年(1781)刊の『呉服文織時代三国志』に着目し、二度の研究発表を行った。 日本中国学会第67回大会での口頭発表「都賀庭鐘の中国演劇観――徐渭の影響を中心に――」では、謡曲・歌舞伎・人形浄瑠璃の漢訳である『四鳴蝉』について、明・徐渭の影響を中心に考察した。①『四声猿』(1551-1563にかけて成立)を範としたのは明雑劇の形式が最も日本演劇を変換するのに適していたこと、②ひとり庭鐘のみならず日本の読者には明代の戯曲が好まれたこと、③ 文体意識の面では、庭鐘の雅と俗に対する相反する志向性の中に、徐渭の「本色」を尊ぶ姿勢を通過した影響が想像されることを示した。 第四回中・日・韓朝言語文化比較研究国際シンポジウムでの口頭発表「都賀庭鐘『呉服文織時代三国志』の日本表象」では、歌舞伎の形式で書かれた『呉服文織時代三国志』について取り上げた。翻訳・翻案という営為と不可分である都賀庭鐘の作品においては、繰り返し〈越境〉がテーマとされるが、同時にその未遂性が指摘される。『呉服文織時代三国志』に至って作中人物の呉服(蔡[王炎])と文織(貂蝉)は越境を完遂するが、それは『日本書紀』の記述という典拠に支えられてのことであり、回帰すべき帰着点としての日本の表象が越境の支柱となっているためである。
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Research Products
(2 results)