2014 Fiscal Year Research-status Report
タンザニアのPFMシステムのREDD適用における可能性と課題
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25870702
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
福嶋 崇 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (40634291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | REDD政策 / 気候変動 / 参加型森林管理(PFM) / タンザニア / 京都議定書 / 吸収源CDM / 環境ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、途上国における森林減少・劣化防止を通じた温室効果ガス削減政策であるREDD政策を研究対象とし、タンザニアの参加型森林管理(PFM)システムのREDD適用における可能性と課題を明らかにすることを目的とする。このため、当該年度は主に1.REDDの国際交渉の進展や各国の動向に関する情報収集、2.タンザニアを対象とする海外調査、3.以上の調査結果をベースにした論文の作成及び学会での口頭発表、を実施した。 1.交渉担当者や専門家などへの聞き取り調査や文献調査により、継続的に情報収集を行った。特に毎年開催のCOPでは将来枠組みやREDD政策のルールなどが議論、決定するため、重点的に情報を収集した。 2.タンザニア調査については、特に以下の項目について調査を実施した。中央政府関係者:REDD政策導入のための体制整備状況、PFMの課題やこれまでの経験・知見など/地方政府関係者:上記に加え、当該地の森林状況、PFM・REDD事業実施状況など/地域住民(アルーシャ州のPFM事業対象地):PFM事業に対する評価、森林減少状況・要因、REDD事業のポテンシャルなど 3.学会発表については「タンザニアにおける参加型森林管理(PFM)制度の発展可能性」、「タンザニアのPFMシステムのREDD-plus適用における可能性と課題」について口頭発表を行い、導入から約20年間が経過したタンザニアにおけるPFMの課題をまとめ、現地調査をもとにREDD適用に伴う発展可能性及び課題について考察を加えた。論文については同発表内容をもとに執筆を進めた。 これまで進めてきたPFMのREDDへの適用を検討しているタンザニアにとって、現地調査をもとにPFMの課題を整理しREDD適用における可能性・課題を分析・考察する本研究は大きな意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載していた当該年度の研究計画としては、REDDの国際交渉の進展などに関する情報収集、タンザニア・ダルエスサラーム及びアルーシャ州を対象とする海外調査、論文の執筆・投稿、学会における口頭発表、としていた。 国際交渉の進展などに関する情報収集は2003年より継続して実施してきており、交渉担当者や政府関係者、専門家などとも十分に良好な関係を構築できていることから、順調に行っている。各国は2020年以降の気候変動対策に関する将来枠組みという重要なテーマについて2015年末の合意を目指しているため、2014年末のCOP20においてはREDDに関する大きな進捗は見られなかった。一方で、この合意によりREDDに関する交渉が今後急速に進展する可能性が高く、急速な制度設計は数多くの問題点が未解決なままに政策の形成・実施へと進行する懸念をはらむ。議論の推移について注意しながら引き続き情報収集を行っていく。 タンザニア現地調査については、採択前及び前年度に既に複数回の現地調査を実施してきていることから関係者との関係性も十分に構築できており、当該年度は聞き取り調査も円滑に行うことが出来ると共に、調査対象地となるPFM事業対象村落における調査も開始した。次年度は引き続き事業対象村落における質問票を用いた詳細な現地調査を実施し、分析・考察を深める。 学会での口頭発表は、タンザニア現地調査における情報収集が当初の想定よりも円滑に進んだ結果、前年度の調査により明らかにしたPFMの課題をもとに、「PFMのREDD適用における可能性と課題」というより踏み込んだ内容について行うことが出来た。 投稿論文は、当該年度においては掲載に至る成果は上げられなかったものの、学会発表で示した通り十分な調査結果は得られており、英文での執筆を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度における研究の実施はおおむね順調に進展していることから、REDDに関する情報収集、タンザニア現地調査(1回)について、最終年度も同様の活動を継続する。特に、REDDに関する研究においては、申請者がこれまで研究対象としてきた吸収源クリーン開発メカニズム(CDM)政策との比較を行うことを念頭に、関係アクターの参加、パートナーシップの現状及び今後に向けた動き、REDDに対する関係アクターの評価(利点・問題点など)を把握する。(※途上国における森林減少・劣化防止を対象とするREDDに対し、吸収源CDMは新規植林・再植林を対象とする。2013年度以降の気候変動防止のための枠組みへの導入が検討されているREDDは、2003年度に導入された吸収源CDMの対象を発展的に拡大したものと位置づけることが出来る。) 最終年度における研究成果の公表については、これまでの現地調査結果を取りまとめ、第126回・日本森林学会(2015年3月)における発表内容をベースに「タンザニアのPFMシステムのREDD-plus適用における可能性と課題」と題して投稿論文を作成し、『African Journal of Environmental Science and Technology』誌に投稿する。論文は、タンザニアの関係者への公表を念頭に英語で作成する。また、第127回・日本森林学会(2016年3月)においてREDDと吸収源CDMを比較し、環境ガバナンスの観点から分析した研究成果についての発表を予定。
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