2013 Fiscal Year Research-status Report
感染に必須因子である黄色色素の生成阻害剤に関する研究
Project/Area Number |
25870704
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
福田 隆志 北里大学, 薬学部, 助教 (30348586)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 抗感染症 / 構造活性相関 |
Research Abstract |
最近、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) の名前の由来でもある黄色色素(staphyloxanthin)が、菌の感染過程において必須成分であることが報告された。そこで申請者は簡易的な黄色色素生成阻害活性を評価する方法を構築し、天然物ライブラリーならびに微生物培養液を中心に評価した。その結果、ライブラリーからは citridoneA が色素生成阻害活性を有する事を初めて見いだした。本研究では citridoneA の黄色色素生成阻害メカニズムの完全な解明および誘導体合成による化合物の最適化を行い、新しい作用を有したMRSA感染予防治療薬への展開を目的としている。 昨年度は誘導体の活性評価および化合物の最適化に力を注いだ結果、目的の活性を維持するには構造中の phenilpiridone 環に4,5,6a-trimethyl-3,3a,4,6a-tetrahydro-2H-cyclopentafuran が結合した 3 環性部分が必須であり、かつベンゼン環部分は mono 置換である事が活性には重要である事が判明した。また目的の活性とは異なるが、これら citridone 類がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) に対し、抗菌薬であるイミペネムの活性を増強する活性を同時に有している事も判明した。これら結果については昨年度論文発表を行っている。また citridone A の活性メカニズム研究では、黄色色素生成阻害によって蓄積した生合成中間体と考えてた化合物がマススペクトル解析により全く異なる分子であるという興味深い知見を得る事ができた。これについては今年度精査を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度計画していた citridone A のメカニズム研究は 黄色ブドウ球菌 を使用する理由からスピードアップができず、まだ大きな成果は得られていない。そのかわり今年度予定していた研究計画を前倒しにする事で、citoridone A およびその誘導体に関する一定の成果を得られたと考えている。これらの知見は昨年度に論文投稿ならびに受理を終了し、オンラインで公開されている。また新しい化合物の発見を目指したスクリーニングを行うことにより、新規活性物質(Graphiumins A~F と命名)を見いだした。それらの構造決定は各種機器分析にて行い、いずれも thiodiketopiperazines 骨格を有した化合物群であると決定した。現在はその有用性を確かめる為に、様々な活性評価を行っている。また本化合物群に関する論文の作製にも取りかかっている。 また上記以外に、スクリーニングにて活性を示したため検討を開始した微生物培養液から既知化合物ながら黄色色素の生成を阻害する化合物 (Aspulvinone H) を見いだした。本菌株の精査中に新規化合物 terretonin G を発見した。本化合物は sesterterpenoid の一種であり今回初めて抗菌活性を有する事を明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
黄色ブドウ球菌を使用する理由から大量培養が難しい等問題もあるが、現在は LC-MS 等を駆使して少ない量でも化合物を見いだす努力を続けている。昨年度に効率の良い培養方法ならびに抽出方法をほぼ確立したので、本年度は化合物の同定まで行う予定である。また citoridone に関しては誘導体合成の結果より、天然物が最も強い活性を示す事が判明した事から化合物の最適化研究を終了し、in vivo 感染実験へと移行する予定である。この結果をもとに薬剤開発の可能性を判断する予定である。 またスクリーニングの継続を行い新たな活性化合物の発見を目指す。その為に今までスクリーニングに使用していた様なありふれた微生物培養液ではなく、特殊な環境より分離された微生物(温泉環境下や海底土壌など)の培養液を用いて行う。ちなみに昨年度見いだした graphiumins は沖縄県石垣島の海底土壌より分離された真菌培養液中より見いだされた活性物質である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時に予定していた機器の購入を見送った。本来なら本機器を導入し大量の化合物の精製を自動化する予定であったが、本年度は人力で行った。それでも新規活性化合物を見いだすことに成功する事ができた。 化合物の精製を行うにあたり最も大事な事はピュアな化合物を得る事である。そこで現在は HPLC のポンプを入手している。しかし本機器を動かす為のコントローラーや UV 検出器が不足しているため稼働不可能となっている。そこで本年度はこれら精製に使用する機器を稼働させる為に必要不可欠な機器を購入予定である。具体的な機器をすでに選定しており5月中に納入予定である。
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