2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞死制御機構におけるミトコンドリア局在型SMaseの生理的機能に関する研究
Project/Area Number |
25870705
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
熊谷 剛 北里大学, 薬学部, 講師 (30365184)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スフィンゴ脂質 / ミトコンドリア / アポトーシス / オートファジー |
Research Abstract |
本年度は、これまで機能が不明であったミトコンドリア局在型スフィンゴミエリナーゼ(mitSMase)が、生体内でどのような役割を果たしているのかについて、細胞死に対する影響を解析することで検討を行った。 実験にはマウス繊維芽細胞由来L929細胞株を用いて、mitSMase過剰発現細胞株およびmitSMaseノックダウン細胞株を構築し、ミトコンドリアを経由してアポトーシスを誘導することが報告されているエトポシド処理による細胞死に対する影響を検討した。その結果、予想と反してmitSMaseがエトポシドによる細胞死誘導を抑制することを見いだした。この抑制効果は、同様にミトコンドリアを介してアポトーシスを誘導するTNF-α処理による細胞死でも認められた。一方、ミトコンドリア非特異的経路で細胞死を誘導する過酸化水素やジエチルマレイン酸処理においては抑制されなかった。このことから、mitSMaseはミトコンドリアを介した細胞死経路を特異的に制御して細胞死を抑制していることが明らかとなった。 さらにmitSMaseによる細胞死抑制機構の解析において、mitSMaseがオートファジーの誘導を亢進することによって、細胞の障害性を軽減して細胞死を抑制している可能性が示されている。 これまでの報告から、ミトコンドリアにおけるセラミド生成が、細胞死を誘導する制御因子として重要な役割を有していることが推測されているが、その生成に関わる分子の同定はなされていなかった。本年度の成果は、ミトコンドリアにおけるセラミドがこれまでの知見とは異なり、細胞生存に関わることを示す新しい発見であり、またその機構にこれまで機能未知であったmitSMaseが関与していることを明らかにした点で意義のある成果であると考えられる。今後さらに詳細な解析を行うことで、mitSMaseの生理的意義をより明確になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度の研究計画では、mitSMaseがミトコンドリアを介した細胞死誘導において、どのような生理的意義を持つのか? を明らかにすることを目指して、①ミトコンドリアを介した細胞死への影響、②ミトコンドリアのおけるスフィンゴ脂質代謝に対する影響、について生化学的、分子生物学的アプローチで解析を行うこととしていた。 ①の細胞死への影響については、mitSMase過剰発現細胞およびノックダウン細胞を構築して解析することにより、予想と反してmitSMaseがミトコンドリアを介したアポトーシス誘導の抑制に関わっていることを明らかにした。さらに、その細胞死抑制機構についての解析も進めており、mitSMaseが自食作用であるオートファジーの誘導を亢進して障害を受けたミトコンドリアの除去を促進することで細胞死を軽減している結果を得ており、当初の研究計画に沿って順調に成果を得ていると考える。 一方、②のミトコンドリアにおけるスフィンゴ脂質代謝に関する解析については、LC-MSなどの分析機器の整備の遅れなどから、ミトコンドリアにおけるセラミドをはじめとするスフィンゴ脂質の詳細な解析が滞っている状況である。現在機器の整備が整ったことから、H26年度に早急に解析を開始して、mitSMaseにおけるスフィンゴ脂質代謝の影響および生成されるセラミド分子種の同定など研究計画に沿った解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度の研究計画で解析が遅延していたミトコンドリアにおけるスフィンゴ脂質代謝の解析を行い、mitSMaseによるセラミドの生成が、実際に細胞死抑制に機能していることを実証する。また、LC-MSを用いた解析により、細胞死抑制に関与するセラミド分子種の同定を試みる。 それと並行して計画していた「mitSMaseが細胞死制御以外のミトコンドリアの機能にどのような生理的意義を持つのか?」を明らかにすることを目的として研究を進める予定である。 これまでの解析から、mitSMaseは精巣で特に強く発現していることが明らかとしている。精子形成過程ではミトコンドリアの形態変化が起り、その結果、精子の運動能に重要な役割を果たしていることが知られている。セラミドは脂質膜の強度を高めることが報告されている。従って、mitSMaseによるセラミド生成が精子における特徴的なミトコンドリア構造に関わっているかもしれない。あるいは精子形成過程で観察されるアポトーシス誘導などに関わっていることを推察される。 そこで、先ず精巣においてどの細胞に発現が強いのかについて、マウス精巣切片を用いた免疫組織染色法により検討し、より詳細な発現場所の同定を試みる。その結果より、精巣または精子のミトコンドリアにおけるmitSMaseの生理的意義を推察し、解析に適した培養細株等を入手して解析し、免疫染色の結果より推察したmitSMaseの生理的意義の実証を行う。 一方、mitSMaseの発現制御機構、活性制御機構についての解析を行う。精巣で特に発現が高いことから、精巣における発現制御に関わる転写因子およびプロモーター領域について、ルシフェラーゼアッセイおよびEMSAにより解析を行う。これらの解析を行うことにより、mitSMaseが生体で細胞死制御以外に果たす役割を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(4 results)