2013 Fiscal Year Research-status Report
転移制御を目指したがん細胞特異的な新規・金属ナノ粒子による放射線併用療法の創出
Project/Area Number |
25870707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
余語 克紀 北里大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30424823)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線生物学 / 放射線治療 / 医学物理学 / 放射線技術学 / 生物物理学 |
Research Abstract |
本研究では、金属粒子を放射線治療と併用し、原発巣とその周りの潜在的な転移巣へも十分な効果をもらたらす治療法の開発を目的とする。先行研究から、金粒子は、必要な投与量が多い点が課題である。そこで従来よりも少ない投与量で効果を発揮する金粒子を、がん細胞へ特異的に集積する金粒子の開発という切り口で行い、課題を克服する。がん細胞への集積が高い金粒子の開発は、がん細胞特異的な抗体を金粒子に標識することで実現する。本年度は、まずDNA標的の抗体に代え、素早く結果の出る分子レベルの実験を行い、抗体標識の条件を詰めることを目標とした。 金属粒子;まず扱いやすい金粒子を考え、数社から粒子径の異なる製品を購入し、使用条件を検討した。金粒子は溶液条件の変化により、凝集しやすいことが分かり、粒子表面のブロッキング法を検討した。 DNA電気泳動法;放射線による超らせん状DNA分子の切断能力の違いを定量化し比較する方法を検討した。DNA切断は、基質に超らせん状DNAを用いることで、DNA電気泳動法で高感度に検出可能となる。金粒子と超らせん状DNAを混ぜて放射線を照射し、DNA電気泳動を行う。DNA2本鎖切断は直線状、1本鎖切断は開いた環状、切断なしは超らせん状DNAのバンドとして現れ、照射前後の割合をとった。 放射線源;医学部RIセンターにあるX線照射装置(~30 Gy/h)を用いたが、線量率が低いため、実験で必要な~1000 Gyを照射するのに時間を要することが分かった。病院所有のリニアック治療機からの高エネルギー X線(~10 MV, ~300 Gy/h)を使用することも含め検討した。 抗体標識法の検討;本年度は、まずDNA標的の抗体に代え、素早く結果の出る分子レベルの実験を行い、抗体標識の条件を検討した。標識金粒子がDNAに結合するかどうかは、蛍光顕微鏡などをつかえば、比較的簡単に分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北里大学に赴任直後であったため、まず生物学実験を行える環境の整備から行い、研究室のセットアップに予想以上の時間を要した。早川和重教授(医学部)のご厚意で放射線科学の生物実験室を使わせていただけることになった。実験室は、しばらく使われていなかったため整備した。また出身研究室(早稲田大学)から不要となった機器類を譲渡していただいた。北里大へ搬送する際に、貴重な試薬や精密機器類であり、必要に応じて専門業者によって搬送した。この関係で、研究費の支出先として、機器や試薬等の搬送費が多くなっている。以上、実験室内の備品をほぼ一新することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
がん細胞特異的な抗体を標識した金粒子の開発 <目的>前年度から引き続き、DNA抗体標識の条件詰めを行い、条件が固まったところでがん細胞の抗体標識に切り替える。がん細胞への集積が高い金粒子の開発を目差し、がん細胞特異的な抗体を金粒子に標識する。開発した標識金粒子による放射線の増強効果を定量化して比較、および細胞毒性を調べる。 <方法>放射線照射前後の培養細胞によるコロニー形成能で定量化する。抗体標識金粒子のあり/なしで生存率曲線の変化を比較する。<これまでの準備状況>コロニーアッセイ法は、研究協力者の石山らの先行研究での実績がある。申請者らは金粒子に対して抗体標識の実績がある(Yasuda et al., Nature 2001)。抗体は1)既存の分子標的薬、2)新規・腫瘍マーカーを利用する。医療衛生学部・佐藤雄一教授からサンプル提供、アドバイスを受ける。抗Basigin抗体、抗RACK1抗体(Nagashino, Sato et al., Lung Cancer 2010)や細胞接着分子等を標的とする。本学医学部・培養細胞実験研究支援センターの支援を受ける。培養細胞実験;Hela, A549, CWR22RV1, LNCaP(研究協力者の石山、佐藤らが取り扱い経験のある細胞株)。放射線源;病院リニアック(放射線治療機)を使うための交渉済み。 うまくいかない場合の対象法 (抗体標識など);がん細胞への集積確認;抗体標識金粒子が、がん細胞特異的に集積するかどうか、光学顕微鏡で直接観察して確認する。ナノメートルサイズの金粒子は見えないことも予想されるので、大きな金粒子(200-1,000 nm)も用意する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
赴任直後で実験室のセットアップに予想以上の時間を要したため、金粒子へ抗体標識法の条件詰めが遅れた。従って、当初の予想よりも、抗体や標識試薬にかかる研究費が少なかった。 今後は、金粒子への抗体標識法の条件を本格的に詰めていくため、抗体や標識試薬に研究費を使って行く予定てある。抗体は数種類の標的の違い物を購入し、標識方法も違った方法を比べながら条件詰めを行うため、複数の標識試薬を購入予定である。
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Research Products
(3 results)