2014 Fiscal Year Research-status Report
転移制御を目指したがん細胞特異的な新規・金属ナノ粒子による放射線併用療法の創出
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25870707
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
余語 克紀 北里大学, 医療系研究科, 講師 (30424823)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線生物学 / 放射線治療 / 医学物理学 / 放射線技術学 / 生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
【放射線によるDNA損傷の電気泳動法による定量化法の確立】 金粒子の放射線増強の効果をDNA分子の切断能力の違いとして定量化する方法として、プラスミドDNAの放射線による形状変化を電気泳動法で定量化する方法を立ち上げた。放射線によるDNA切断は、基質に超らせん状DNAを用いることで、DNA電気泳動法で高感度に検出可能。DNA電気泳動条件や蛍光色素による染色法を検討し、定量化を行った。金粒子と超らせん状DNAを混ぜて放射線を照射し、DNA電気泳動を行った。DNA2本鎖切断は直線状、1本鎖切断は開いた環状、切断なしは超らせん状DNAのバンドとなり、照射前後の割合をとった。放射線源は医学部RIセンターX線照射装置(140 kV, ~30 Gy/h)を用いた。 【金ナノ粒子の表面電荷の違いによる増強効果への影響】 金ナノ粒子は、数社から表面電荷や粒子径の異なる製品を購入し、使用条件を検討した。表面が正電荷に帯電した金ナノ粒子の添加によってDNA1本鎖切断が増えたことを示唆するデータを得られた。一方で表面電荷のない金ナノ粒子では増強効果が見られず、金ナノ粒子の表面電荷によって結果に違いが生じた。これは、DNAのリン酸骨格が負に帯電しているため、金ナノ粒子が正に帯電することで近づき、DNA損傷が起きやすかったのではないかと考えられる。 しかし、さらなる増感効果を期待し金粒子濃度を上げたところ、バンド全体の輝度が減少した。これは何かしらのアーチファクトが生じている可能性がある。バンドが全体的に減少したのは、金ナノ粒子とDNAが凝集し、DNAが沈殿したためにDNA量が全体的に減少した可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放射線によるDNA損傷に対する金ナノ粒子の増強効果をDNA電気泳動法で見るのに、予想以上の時間がかかってしまった。とくに始めは表面電荷なしの金ナノ粒子を用いて実験を行い、実験条件をふったが思うような増強効果を得られなかった。表面が正電荷の金ナノ粒子を用いることで増強効果が見られるようになり、状況が改善した。
【照射時の溶液条件】 金ナノ粒子による増強効果は、TEバッファー中で見られたが、TEバッファーでは照射線量が多く必要であり、時間のかかる一因となった。X線によるDNA切断は、溶液(バッファー)条件に大きく依存することが分かった。TEバッファーでは、~300 Gyでも一本鎖切断(SSB)が増える程度であったが、PBSバッファーではSSBとともに二本鎖切断(DSB)が見られた。また金ナノ粒子は、溶液条件の変化により、凝集しやすいことが分かった(塩濃度の上昇で溶液が赤→紫色に変化)。PBS下で金粒子を加えたところ、DNA切断効果は増強されずにむしろ減少した。これは先行研究にて報告されているが、はっきりとしたメカニズムは分かっていない。金粒子の凝集が関係している可能性があり、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
【金ナノ粒子の濃度の最適化と結合の確認】 金ナノ粒子の放射線増強効果をDNA電気泳動法で調べたところ、金粒子濃度が薄いと増強効果が見られず、また濃くても増強効果が見られなかった。したがって、金粒子濃度の最適化が必要と考える。また金粒子による増強効果は、表面電荷の影響を受け、DNAへの結合がポイントであると仮説を立てたが、実際に結合しているか確認を行いたい。 【DNA抗体標識法の検討】 放射線によるDNA損傷に対する金ナノ粒子の増強効果では、金ナノ粒子の表面電荷が影響することが分かった。これは、金ナノ粒子がDNAに結合できるかどうかがポイントと考えられる。金ナノ粒子にDNA抗体を標識することで、さらなる増強効果が期待できる。 このようなDNA標的の抗体標識を検討し、素早く結果の出るDNA分子実験を行い、抗体標識の条件を詰めることで、がん細胞標的の抗体標識への足がかりとしたい。標識金粒子がDNAに結合するかどうかは、蛍光顕微鏡などをつかえば、比較的簡単に分かる可能性がある。
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Causes of Carryover |
放射線によるDNA損傷に対する金ナノ粒子の増強効果を見るのに、予想以上の時間がかかってしまった。したがって、当初の予想よりも、抗体や標識試薬にかかる費用が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、金粒子への抗体標識法の条件を本格的に詰めていくため、抗体や標識試薬にも研究費を使っていく予定である。抗体や標識試薬は数種類の違う物を購入し、条件詰めを行う予定である。また金粒子がDNAに結合するかどうか確認するために、直接観察するための顕微鏡の整備も行う予定である。
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Research Products
(1 results)