2014 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症患者におけるレジリエンスとその生物学的基盤
Project/Area Number |
25870713
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
内田 裕之 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40327630)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レジリエンス / 統合失調症 / 回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症患者におけるレジリエンスに影響する心理社会的因子について包括的に検討した報告はなく、さらには、その生物学的基盤に関するデータも不足している。本横断研究では、統合失調症患者を対象に、レジリエンスの程度と関連する因子について検証した。 本研究には、臨床的に安定した統合失調症患者60名が参加した(平均年齢45.9±10.0歳、男性37%、平均罹病期間18.9±10.6年)。同患者群におけるレジリエンス総点の平均点は110±25点(範囲:46-170点、高得点ほど高いレジリエンスを反映)であった。レジリエンス総点と、人口動態的指標および種々の心理的尺度との相関関係に関する検討では、正の相関を示したのがPearsonの積率相関係数で自尊感情(r=.703,p<0.000)、スピリチュアリティ(r=.626,p<0.000)、生活の質(r=.564,p<0.000)であり、負の相関を示したのがSpearmanの順位相関係数で絶望感(r=-.477,p<0.000)と内面化された偏見(r=-.391,p=0.002)であった。一方、レジリエンス総点と生物学的指標との相関関係に関する検討では、血中BDNF、ACTH、コルチゾール、高感度CRPおよび唾液中αアミラーゼとの間に有意な相関は認めなかった。 本研究により、統合失調症患者におけるレジリエンスと関連が深い心理的因子が同定されたことで、将来的に同患者群におけるレジリエンスの向上を目的とした介入への応用が期待される(例:内面化された偏見の軽減を通じたレジリエンスの向上など)。一方、本研究において調査した生物学的指標とレジリエンスとの間に有意な関連は見られず、同患者群におけるレジリエンスの生物学的基盤については今後さらなる検討が必要である。
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