2015 Fiscal Year Annual Research Report
越境と往来にみるエジプト人出稼ぎ者の社会的ネットワークとアイデンティティの民族誌
Project/Area Number |
25870734
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡戸 真幸 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 研究員 (00634338)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エジプト / クウェート / カナダ / 移民研究 / 家族・親族論 / 社会的ネットワーク / 出稼ぎ労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エジプト人の国境を越えてグローバルに形成される出稼ぎ者の社会的ネットワークを、アラブ圏からクウェートを、英語圏からカナダを選択し、それぞれの国で作られ、またエジプトとの間で作られる事例の双方について、人類学に基づく現地調査によって明らかにする試みである。 本年度は、前年度までの研究成果をまとめ、日本文化人類学会ではクウェートにおけるエジプト人出稼ぎ者の調査報告として、永住許可の出ない同国での一時的滞在によって、両国を往来する生活を続けながら、両方に自身の場所を構築するネットワークのあり方の問題点を指摘した。また、日本中東学会ではカナダにおける調査から、同国における移民政策の紹介と併せ、高学歴で社会的地位がエジプトである程度確立した者が行く傾向が強いことを報告した。それぞれの国に関するネットワークの異同について、会場の内外で多くの意見交換を行い、これらで得た知見を基に、本年度は、クウェートとカナダにて、追加調査を行った。 クウェートでは、出稼ぎ者の仕事や人間関係を調べ、本国にいる家族との関係についても聞き取り調査した。その結果、本人の家族・親族への影響力は、限定されており、そのネットワークも本人不在の中では、強固ではない現状が見えた。 カナダでは、エジプト人が組織する相互扶助団体の会長との接見から、同国でエジプト人が団体を通じて得るのは、社会的上昇の契機となるような交流というよりも、永住権獲得後のアイデンティティの維持とカナダで生まれ育った子供たちへの教育の側面が強いことが解った。 両国の調査から、社会的ネットワークのあり方は、出稼ぎ先国での環境に左右され、その方向性や質、強度が変化すると言える。それは、移民政策と永住権獲得の有無が要因に挙げられる。そのため、クウェートでは本国との関係が密に保たれるのに対し、カナダでは国内での2世以降も含めた幅広い交流が見られた。
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