2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870751
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
高橋 塁 東海大学, 政治経済学部, 講師 (30453707)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベトナム / 農村人口の固定性 / チャンチャイ / 企業家的農民 / 雇用吸収力 / 農業の地域的多様性 / 農業発展の初期条件 |
Research Abstract |
本研究の目的は、工業化過程にあるベトナムに焦点をあて、チャンチャイとよばれる大規模農業経営の展開に着目し、その存立要因と経済発展に与える影響を以下の観点から分析することにある。1)大規模経営の存立要因を「土地生産性と農業経営規模の逆相関関係」という議論からとらえ、小規模な家族農業経営の有利性が説かれる発展途上国で、農業経営大規模化の要因と意義を明らかにする。2)農業の大規模経営化が農業のみならず一国の経済発展全体に与える影響を考察する。3)歴史的背景や地理的、気候的要因によるベトナム農業の地域的多様性を考慮した比較研究を行う。 このうち平成25年度は、研究計画に沿い、データの収集と研究環境の構築に研究の重点が置かれた。主な研究資源は、研究目的の2)、3)に対して注がれ、その結果、下記の重要な研究実績を得た。1)1980年代半ばから直近までのセミマクロデータの収集を行い、およそ30年の農村人口の時系列を作成した結果、ベトナムにおける「農村人口の固定性」という現象を確認した。2)農村過剰労働力の吸収先として、最新の人口動態統計、人口センサスデータ、ならびに2農林水産業・農村センサスのデータを用いて、チャンチャイの雇用吸収力が確認された。3)セオドア・シュルツが提起した「発展途上国の農民は、変化する経済状況と機会に適応し革新する意欲をもった農民」であるという企業家的農民論からチャンチャイを再定義し、調査票のデザインに反映させ、チャンチャイ調査の準備とその理論的な位置づけを再確認した。4)農業集団化期における農業発展水準の地域比較を可能とするデータを得た。具体的には、研究が殆どない中部の合作社経営に関するデータ(クアンガイ省のもの)を入手し、研究が多い北部との比較を可能にした。これにより、工業化過程における農業発展の初期条件の地域比較ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画は、セミマクロデータや、VHLSS(Vietnam Household Living Standards Survey)2006、2008、2010等のマイクロデータの収集、およびそれらを用いたパネルデータベースの作成、作成したデータベースによる「土地生産性と農業経営規模の逆相関関係」、チャンチャイのパイロット調査を予定していた。このうちデータの収集とパネルデータの作成については、順次進めることができているが、チャンチャイの調査については平成25年度は実施することが困難な状況となった。その理由は、調査を予定していた平成25年度の秋にクアンガイ省の農村で台風による甚大な洪水被害が発生したためである。本研究の特長の一つであるベトナム中部の分析にはクアンガイ省の調査は必要不可欠であったため、平成25年度調査実施予定分を平成26年度の比較的早い段階で行う方向へと修正した。
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Strategy for Future Research Activity |
既に「現在までの達成度」の項目で述べた通り、平成25年度の研究計画で予定通り行うことが難しかったチャンチャイの実態調査のパイロット調査については、平成26年度の8月から9月にかけての比較的早い段階に実施することを目指し、研究計画の修正を行う。それをうけてパイロット調査の約半年後にあたる平成26年度の3月頃にパイロット調査を受けた実態調査の本調査を計画する。またセミマクロデータを中心にデータや資料の収集は比較的順調に進んでいるが、VHLSS等、マイクロデータの最新版については交渉を進めているものの、収集に時間がかかっているため、平成26年度に精力的に進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既に「現在までの達成度」ならびに「今後の研究の推進方策等」で述べたように、平成25年度は、当初予定していたベトナム中部を主な対象としたチャンチャイ実態調査のパイロット調査が、現地の台風による洪水被害により実施することが困難な状況となった。それゆえ旅費の項目において、平成25年度は予定通り使用することができなかった。また予定していた一部資料・データの入手が権利者との交渉等により遅れている部分があることも次年度使用額が生じた理由となっている。 平成26年度は平成25年度から延期となったチャンチャイ実態調査のパイロット調査を比較的早い段階に行うことを目指しているため(8月から9月頃を予定)、その旅費に使用する予定である。またマイクロデータを中心に入手が遅れている資料・データの取得についても、使用される予定である。
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