2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の民俗芸能の記譜資料に関する基礎的研究―音楽の伝承の観点から
Project/Area Number |
25870752
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
福田 裕美 東京音楽大学, 音楽学部, 講師 (50633624)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民俗芸能 / 民俗音楽 / 記録 / 記譜資料 / 伝承 |
Research Abstract |
本研究は、今日の日本の民俗芸能の伝承活動において多様な形態で存在する記譜資料について、複数の現地調査に基づく比較検証・分析を通して、伝承活動といかなる関係にあるかを明らかにすることを目的としている。したがって、複数の民俗芸能について、現地に出向き伝承の現場における記譜資料の状況とその活用に係る情報収集の作業を軸にし、そこで得られた情報の整理・分析を行う中で、民俗芸能の音楽の伝承における記譜資料の位置づけを捉えなおすことが、本研究の主眼となる。 初年度にあたる今年度は、第一に、伝承の現場における記譜資料の状況とその活用に係る現地調査・情報の整理として、上町法印神楽(宮城県登米市)、唐津くんち(佐賀県唐津市)、氷見の獅子舞(富山県氷見市)等の現地調査を実施した。具体的な調査内容は、録音と録画、また関係者へのインタビュー等である。これらの調査をとおして、次年度以降の新たな調査対象の検討も行った。 第二に、伝承者以外の行政等が作成した記譜資料の系譜に係る体系的調査研究の整理を目的として、すでに入手済みの資料のさらなる整理、および新たな資料の入手に努めた。あわせて、これらの資料の分析により、現地調査の手法・視点の適正化を図った。 そして第三に、関係する学会の研究大会や研究例会等への参加により情報交換を行った。また株式会社劇団わらび座(秋田県仙北市)が有するデジタルアートファクトリーや民族芸術研究所において、関係資料を閲覧・分析するともに、関係者へのインタビューをとおして各種資料の記録の手法等のノウハウの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、伝承者による記譜資料と伝承者以外による記譜資料の両方の存在が明らかとなっている複数の事例を選定し、現地における調査を中心に行うものである。初年度にあたる今年度は、現地調査と並行して、これまでの研究を通してすでに多く入手している伝承者以外による記録資料に係る情報の再整理も実施する計画としており、こちらはおおむね当初の計画を達成できたと言える。しかし、前者の現地調査については、当初予定していた調査地と調査日程があわず、新たな調査地の選定に時間を要し、結果当初の計画よりもやや遅れることとなった。以上より(3)の評価をするに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初より引き続き伝承の現場における記譜資料の状況とその活用に係る現地調査、情報の整理を中心に実施する計画であったが、今年度の現地調査の遅れを取り戻すべく、さらに現地調査を中心にすすめる予定である。なお、調査の日程については今年度の反省を踏まえて調査先と綿密な調整を行う必要があり、あわせて短期間で効率的な調査を実施するために、現地における調査方法の見直しを適宜行いながら進めるものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた主たる理由は、今年度の「旅費」の支出が当初の計画より少なかったためである。今年度は実施予定の現地調査の計画が遅れたことに加えて、飛行機による遠方の調査が少なかったことも、「旅費」の支出額減少の理由である。また、「その他」として計上していた資料複写・通信費は、主に現地調査先においての支出を想定していたが、これについても現地調査の遅れにより、支出が全体的に減少した。 なお、「物品費」についてはおおむね計画どおり使用している。 次年度は、当初より、伝承の現場における記譜資料の状況とその活用に係る現地調査、情報の整理を中心に実施する計画であるため、「旅費」を多く計上しているが、さらに今年度実施できなかった現地調査も行うために、今年度生じた次年度使用額については主として「旅費」として使用する予定である。なお、次年度は、新たな調査地の調査のほかに、今年度実施済みの調査地についての二次調査、また新たな調査地についても次年度内に可能なかぎり二次調査を行う予定である。
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