2013 Fiscal Year Research-status Report
建築の環境影響評価における原単位利用時の適合性と分析精度
Project/Area Number |
25870771
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 謙介 東京理科大学, 理工学部, 助教 (30581839)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ライフサイクルアセスメント / CO2排出量 / 誤差分析 / 建築 / 住宅 / 原単位 |
Research Abstract |
本研究は、建築物を中心としたライフサイクルアセスメントの実施において、評価したい投入原材料と、範囲が合致しない「不適合な」バックグラウンドデータの利用が評価結果に及ぼす影響を評価する手法を構築するとともに、建築・住宅の評価における不適合データの影響を定量的に明らかにする。その結果を踏まえ、評価目的に応じたLCA実施の留意点・原単位活用方法を提案することを目的として実施してる。 本年度の研究実績としては、「(a) 実態調査に基づく建築におけるLCAプロセスの整理」では、基本設計、実施設計などのプロセスを整理し、まずは実施設計(見積もり段階)をイメージした試算んを試みることとした。「(b) バックグラウンドデータの適合性評価手法の構築」では、評価したい項目とそれに用いるバックグラウンドデータの評価範囲の合致性を判断する「適合性」の評価手法を提案した。 また、「(c) 建築学会の原単位における適合・不適合の評価」では、8件の事例住宅について、建材製造段階におけるCO2排出量の評価を行い、評価におけるバックグラウンドデータの適合率(全CO2排出量に対する適合データのCO2排出量)を算出した。その結果、いずれにおいても適合率が低く、特に、内外装・設備などはほとんどが適合しない結果ことが分かった。「(d) 評価における不確実性の算出」では、インベントリデータベースIDEAを参考に、不適合なデータの利用によって生じる誤差を算出した。また、それをもとに、事例住宅8件について、不適合データを用いることによる誤差を明らかにした。さらには、それらの結果をもとに、評価誤差と分析における比較可能性について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の全体計画としては、以下の(a)~(e)の手順を設定して研究を実施している。具体的には、(a) 実態調査に基づく建築におけるLCAプロセスの整理、(b) バックグラウンドデータの適合性評価手法の構築、(c) 建築学会の原単位における適合・不適合の評価、(d) 評価における不確実性の算出、(e) 設計プロセス・評価者の評価目的に応じた実施方法の提案 である。 このうち1年目の実施予定の(a)~(d)について、(a)、(b)については、予定内容を完了している。特に(b)の評価手法については、専門家とも意見交換を行うこともできた。(c)、(d)についても、住宅8件の事例データをもとに、適合率の分析や、不適合データを用いることによる誤差の分析など、2年目に実施する予定だった内容もほとんど達成できている。また、成果を学会の大会(日本建築学会・日本LCA学会)で発表し、意見交換することもできた。以上のことから、研究の達成状況としては、極めて順調に進んでいると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に向けては、特に「(e) 設計プロセス・評価者の評価目的に応じた実施方法の提案」に向け、(a)~(d)の内容をふまえ、設計プロセス・評価者の評価目的ごとに評価における不確実性を生じさせる要因やその影響を整理し、評価実施方法における留意点や結果の解釈方法を検討する。 特に、まずは、誤差を大きく生じさせる因子(原単位)を明らかにすることを最優先に取り組みたいと考えている。そのためには、本年度実施した事例住宅8件の分析で誤差を大きく生じさせる項目を分析する。さらには建築分野でCO2排出量が多い項目の分析、専門家へのヒアリングを実施してデータのニーズ調査などを行う予定である。 誤差を生じさせうる項目すべてについて、原単位を改善することは玄地実的には不可能に近いため、以上の検討をもとに、優先的に追加すべきバックグラウンドデータを明らかにする。また、それらのデータを追加することによって、評価精度の改善効果を明らかにし、評価における留意点や改善点などについて整理したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1年目の研究では、演算処理装置やデータベース等が機関として所有している機材・データを利用したり、当初の予定よりも安価で入手することができたため、当初想定していた金額よりも小さな額で収めることができた。 一方で、代表研究者が所属機関の異動があり、これに伴う機関として所有していた機材・データが使用できなくなるため、新たに異動先の機関で機材を購入する必要が生じたため、翌年度分として繰り越すこととした。 異動先では、新たに演算処理装置を購入する必要があるだけではなく、本研究の研究協力者との打ち合わせのための費用も、遠方となるためにかさむことになる。繰り越した分については、こうした研究のための機材の購入や、打ち合わせのための旅費等として使用する予定である。 これ以外に従来から想定していた学会発表・論文投稿のための費用、研究に必要なデータ等の購入にも使用する予定である。
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Research Products
(2 results)