2014 Fiscal Year Research-status Report
転写抑制因子PLZFによる骨芽細胞と軟骨細胞分化制御機構の解析
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25870785
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内藤 昌子 日本大学, 歯学部, 准教授 (40436803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨芽細胞分化 / 軟骨細胞分化 / 転写因子 / グルココルチコイド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度は、骨および軟骨組織におけるPLZF遺伝子の発現および局在解析を中心に行ない、PLZFタンパク質が皮質骨や骨梁の骨芽細胞や骨細胞と、骨端軟骨組織の前肥大軟骨細胞、肥大軟骨細胞、石灰化軟骨細胞で発現することを明らかにした。そこで、骨および軟骨形成におけるPLZF転写因子の機能を明らかにするため、本年度はPLZF遺伝子の過剰発現ベクターの構築とPLZFの機能阻害実験を行うためshort hairpin RNA (shRNA)の構築を行った。 はじめに、軟骨前駆細胞株(ATDC5)を用いてPLZF遺伝子の強制発現を行ない、Insulin刺激による軟骨細胞分化誘導を行うことで、軟骨細胞分化へ及ぼす役割について解析した。PLZFの過剰発現は、ATDC5細胞の軟骨基質染色 (アルシアンブルー染色)と、肥大軟骨細胞の分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)の染色性を亢進させた。また遺伝子発現を解析した結果、組織化学実験の結果と一致し、軟骨基質遺伝子(Aggrecan, typeⅡcollagen, type X collagen)の発現を増加させた。次に、レトロウイルスベクターを用いてATDC5細胞にPLZF shRNAを導入し、PLZF遺伝子の機能阻害実験を行なった。その結果、PLZFノックダウンにより軟骨基質とALP染色性が減少し、軟骨基質遺伝子発現やsox9転写因子の遺伝子発現が減少することが観察された。これらの結果から、PLZF遺伝子は軟骨細胞分化を促進する作用を有することが推察された。また、骨芽細胞のモデル細胞株(MC3T3-E1)を用いた骨芽細胞分化誘導モデルを構築し、骨芽細胞分化における本分子の機能解析を行うための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り本年度は機能阻害実験と遺伝子過剰発現系の実験モデルの構築を進めることができた。骨芽細胞分化のモデルに関してやや遅れがみられる。しかしながら、軟骨細胞分化のモデルにおいて、順調に解析を進めることができ、新たな知見を多く得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Glucocorticoids (GC)は、糖・タンパク質・脂質代謝に加えて、抗炎症作用や免疫抑制作用など様々な生理作用を有するステロイドホルモンに分類される。受容体であるGC receptor (GR)は、GCとの結合により、細胞核内に移行し直接DNAと結合して転写を制御する転写因子として機能する。GCシグナルは、生理的濃度では骨形成を促進するが、薬理的濃度では抑制的な作用を示すと考えられており、骨量減少や骨粗鬆症を引き起こすことが報告されている。また、成長期における高濃度のGC刺激は骨の成長を抑制する作用を有する。GCによる骨の成長抑制作用は、受容体が骨端軟骨組織に発現しているため軟骨細胞の増殖や分化に直接作用しているものと考えられている。平成25年度および平成26年度の研究により、代表者は軟骨前駆細胞モデル細胞株(ATDC5)を用いて、PLZF遺伝子がGCs刺激により発現が誘導されること、PLZF遺伝子は軟骨細胞の分化を促進することを明らかにした。これらの知見を踏まえて、GCによる軟骨細胞増殖分化への抑制的作用に対し、GC応答遺伝子であるPLZF遺伝子がどのように関与するのか検証を行う。はじめに、GC刺激をATDC5細胞に与え、増殖能と分化能の変化を解析し、PLZF過剰発現細胞との相違点を解析する。次に、PLZFノックダウンがGC刺激による軟骨細胞増殖分化への抑制的作用を回復することができるのか検証を行う。また、軟骨細胞のモデルと同様に骨芽細胞分化のモデルを用いてPLZF遺伝子の機能解析を進める。次に、GC刺激による骨芽細胞の増殖分化抑制作用についてもPLZFの関与についても同様に検証を行う。
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