2014 Fiscal Year Research-status Report
強酸耐性植物根圏の共生微生物でイネを守る ~ その強さの秘密を解き明かせ
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25870789
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
相澤 朋子 日本大学短期大学部, その他部局等, 助教 (60398849)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 根圏微生物 / 酸性土壌 / アルミニウム / 重金属 / 多糖 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口増加に伴う食糧増産の必要性が世界的命題となっているなかで、本課題では、耕作に適さない「問題土壌」の多くを占める酸性土壌へ適用可能な植物生育促進法のモデル微生物として、酸性硫酸塩(ASS)適応植物・微生物共生体から得た有用微生物群を用い、ASS適応遺伝子・タンパク質群の選抜と機能解明、根圏微生物の生存と定着・耐性に関与する多糖など金属イオン吸着物質の機能と構造解析などを目的にしている。昨年度は、CA42 株の細胞外多糖がアルミニウムを最大で0.17 μmol/mgの吸着を示し、その他の酸性硫酸塩土壌で問題になる金属(銅、鉄、ニッケル、亜鉛、マンガン)についても吸着が見られたことを確認した。これを受けて今年度は、この多糖について機能と構造の検討を行なった。CA42-多糖について、HPLC分析などによりグルコースのホモポリマーと考えられ、NMR分析、メチル化分析の結合様式の解析の結果を考慮して多糖の構造を決定した。その結果が図5である。CA42-多糖は主鎖にα1-4結合を持ち、グルコース残基約10個毎にα1-4,1-6結合を持つグルコースが存在し、1-6結合からα1-4結合を繰り返すグリコーゲンを生産していると判明した。また、側鎖の鎖長の検討を行った結果、2糖、3糖、4糖を側鎖に持つと考えられる。 また、CA42-多糖、グリコーゲン、でんぷんはAl3+除去能を示し、これらの多糖に共通する1-6結合の分岐がAl3+除去に必要なのではないかと考え、プルラナーゼ処理を行った各多糖のAl3+除去能を調べた結果、1-6結合が重要であると判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルミニウムなど、酸性土壌で問題となる金属イオンを吸着する細胞外多糖について、構造と機能の相関について明らかとなりつつある。また、プロテオーム解析については、分析機器が最新のものが導入されたため、現在分析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
多糖など金属イオン吸着物質の機能と構造解析については、CA42株やAL46株以外の菌株についても、アルミニウムの吸着、有用機能について認められたため、これらの微生物の生産する多糖についても進める予定である。これらの菌株は、酸性土壌修復へ適用する場合に求められると考えられる、pH上昇能、金属耐性能、リン酸塩可溶化能などの機能ももっている。これらの機能は、今後本菌株を植生の回復による酸性土壌環境修復に応用するに当たり、重要な機能であると考えられる。今後はこれらの機能がどのような機構に依っているか検討を進め、応用方法を検討していく必要がある。 さらに、これら微生物のいくつかは分類学的に新規な生物である可能性が高まったため、新種の細菌として国際誌に報告を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定と異なり、プロテオーム解析に精度の高い最新機種を使用できたため、当初の予定より分析回数を少なくする事ができたので結果として使用料金が安く済んだ。また、次年度にこれまでに得られた成果を論文として報告する予定であり、余剰分を英文校閲料として使用したいため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は成果を論文として複数の国際誌に投稿を予定しており、より原稿を良くするためにも次年度使用額分も用いて英文校閲を行う予定である。
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Research Products
(2 results)