2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870794
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
松野 響 法政大学, 経済学部, 准教授 (90588047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較認知科学 / 身体知覚 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生物の視覚的なコミュニケーションを支える身体とその動きの知覚メカニズムを明らかにすることである。地上性の動物であり二足歩行をおこなうヒトと、それ以外の環境で生活するヒト以外の動物とでは、互いに異なる生活環境下に特化した、異なる身体制約を有している。本研究では、そのような動物種間において、視知覚認識がどのように異なっているのかを検討することで、種間の社会的知覚の生物普遍的な側面と、種固有性を明らかにし、視知覚認識の系統発生過程を問うことを目的としている。 計画の初年度である本年度は、第一に、ヒトおよびヒト以外の動物における視知覚実験をおこなうための実験環境の構築をおこなった。ヒト以外の動物における行動学習実験をおこなうためのオペラントボックスの製作、汎用のマイクロコンピュータシステムであるArduinoを用いた報酬呈示装置の開発、マルチメディアAPIを利用した視知覚実験制御プログラムの開発、視線追跡装置の制御プログラムの開発、および、ヒト用実験ブースの製作および実験制御プログラムの開発をおこなった。 第二に、ヒト以外の動物における身体情報の重要性を検討するため、ヒトを対象とした認知研究でもちいられる潜在連合テストと類似した手続きを用いて、身体形状情報からの個体認識を問う視覚弁別研究をおこなった。6個体の新世界ザルを対象とした実験から得られたデータを解析した結果、顔および頭部の視覚情報が得られない場合においても、頭部以下の身体形状情報によって既知個体を識別することができることを示した。この結果は、顔以外の身体に関わる視覚情報も顔同様に他者認識過程において重要であることを示したヒトを対象とした先行研究の結果と一致し、ヒトとヒト以外の動物との間で、他者認識に関わる知覚情報処理のメカニズムが共有されていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画通り、実験環境の構築および、制御プログラムの開発は順調に進み、次年度以降、計画を引き続き進行する体制が整っている。また、ヒトおよびヒト以外の動物を対象とした身体知覚に関する研究をおこない、意義深い成果を得た。一方、本プロジェクトに関わる研究発表が遅れている。これは、実験の実施環境の構築及び実験実施の進行を優先したことと、発表に足る成果を得ることの時期が遅れたためである。次年度以降、本年度得られた成果を次年度以降の成果と合わせて、発表することで、本年度の研究発表の遅れを補填する予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した研究計画に基づき、次年度以降の計画を進める。構築した動物実験およびヒト心理実験のための実験環境を利用してオペラント実験およびヒトを対象とした比較研究を進める。特に大きな計画の変更は予定していない。動物実験において予測される一番の問題は、学習訓練の進展に遅滞が生じる事態であるが、これに関しては、学習訓練を要しないアプローチ(馴化脱馴化法や視線記録法など注視行動を指標とした方法)に切り替える、対象動物種を見直す、等により対処する予定である。本年度、十分におこなわれなかった成果発表については、次年度以降に、本年度得られた成果を含め、順次発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、得られた成果の研究発表の予定に遅れが生じており、それに関わる予算が未使用となった。また、年度後半に発注を予定していた実験用機器に関して、仕様要件に合う製品を選定する作業が滞り、予算の消化が遅れた。 本年分の研究成果についても、次年度以降、発表の機会を得、そのために予算を使用する予定である。また、実験機器に関しては、次年度前半に機器の発注をおこない、研究の進行に影響が出ないよう心掛ける。
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