2013 Fiscal Year Research-status Report
核プロテオミクス分析法の開発と蛋白質ネットワークの解明
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25870798
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
一番ヶ瀬 智子 武蔵野大学, 薬学研究所, 客員講師 (40453956)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核タンパク質 / スーパーオキシドアニオン / プロテオーム解析 / 抽出再現性 / 高速液体クロマトグラフィー |
Research Abstract |
本研究では申請者らが開発したプロテオーム解析法を用いて活性酸素であるスーパーオキシドアニオン(O2-)の消去酵素スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を欠損した細胞の核プロテオミクス分析法の開発を行い、O2-の核内への影響を明らかにすることを目的とする。本年度実施した研究実施項目は下記6項目である。 1.SOD1欠損細胞と発現細胞、DT40細胞の入手→実際の解析用試料であるSOD1欠損細胞と発現細胞と両細胞の遺伝子操作前の細胞であるDT40細胞の提供を研究協力者武蔵野大学薬学研究所 榎本武美教授より受けた。2.核タンパク質抽出条件の再現性評価並びに検討→核タンパク質の抽出市販キットを用い、HPLC-蛍光検出器で評価した。その後、市販キットでの低抽出効率のため、効率を向上させるための検討を行い、抽出効率の向上を達成したものの、この手法では抽出再現性を取ることが難しく、実用的でないと判断した(項目4, 5, 6 参照)。3.核抽出液中に含まれるタンパク質網羅解析のためのHPLC-蛍光検出条件の検討→分離カラムの評価、溶離液組成の検討、グラジェント溶離条件の検討を行った。4.SOD1欠損細胞と発現細胞の差異分析→項目3で確立した条件を基に、両細胞核内タンパク質のHPLC-蛍光分析を行い、SOD1の有無で起こるタンパク質の発現量の差異を分析した。5.変動するタンパク質のnano-HPLC/MS/MSによる同定→上記項目2と並行して、変動するタンパク質の同定を行い、核タンパク質を抽出できているかどうかの確認を行った。6.抽出した核タンパク質を濃縮する手法の導入→項目2、4及び5の結果から、新たに確立した市販キットの効率を向上した改良法でも抽出再現性を得ることが難しかった。そこでキットプロトコール通りに抽出後、核タンパク質をロート型ゲル電気泳動にて濃縮する手法の導入を新たに検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定と比べ、核タンパク質抽出条件の再現性評価並びに検討、及び核抽出液中に含まれるタンパク質網羅解析のためのHPLC-蛍光検出条件の検討で遺伝子操作前の細胞であるDT40細胞を用いることで、従来よりも1/3の培養期間で検討に用いることが可能となった。また、当初の予定では初年度で上記項目3までを行う予定だったが、実験を並行して遂行したこと、市販の抽出キットで再現性が取れないことで早めに実験を切り替えたことが功を奏し、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初順調に進行していたが、途中、取り扱う細胞の核膜が文献に記載されている以上に極めて脆弱であることが判明し、再現性のある核タンパク質の回収が困難であることが判明した。その結果、SOD1の欠損による変化よりも、抽出再現性並びに分注再現性の欠陥による変動が大きく、現状の核抽出条件では差異解析できないと判断した。そこで現在、新たに核タンパク質を濃縮する手法の導入を検討している。濃縮方法はロート管状の筒にポリアクリルアミドゲルを充填したゲルを、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の原理で濃縮する手法で、予備試験にてタンパク質の非特異的吸着が少なく、回収率が高いことが明らかとなっている。しかしながら、この手法は本来、SDS-PAGEの原理に則り、濃縮ゲルにて添加試料を濃縮後、分離ゲルにて分子量の順に試料を分離していく方法である。従って、添加試料の濃縮のみに使用する例は初めてであるため、条件の最適化、並びに評価を今後行う必要性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初物品費として960,000円を予定していたが、今年度は913,678円で充足した。また、研究成果発表に関して、結果公表のタイミングが合わなかったため、初年度は学内の発表会でのみ研究成果を報告するにとどまったため。 研究計画を達成するために新たな手法を導入し検討する必要があるため、初年度の未使用分は次年度に繰り越すこととした。
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Research Products
(2 results)