2014 Fiscal Year Annual Research Report
認知機能の向上を目指した咬合治療論の確立:皮質間機能回路解析による研究
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25870802
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 准教授 (10360207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | NIRS / 機能的結合 / 咬合 / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
「噛むこと(咀嚼刺激)」が高齢者の認知機能を向上させることが明らかになり,「よく噛める」噛み合わせを与える歯科治療が,認知症の予防・改善のブレイクスルーとして期待されている。本研究は患者の治療前後において,咀嚼刺激による認知機能の向上度を脳認知機能回路の賦活化から捉え,補綴治療による噛み合わせの改善が認知機能の維持・増進をもたらす神経科学的根拠を明らかにすることを目的とした。最終年度では64-79歳の無歯顎(上下顎総義歯)被験者を対象とし,下顎インプラントオーバーデンチャー(IOD)治療を行う前後での脳活動変化の検討を主に行った。IOD治療により脳認知機能への寄与が見込まれる2つの知見を得た。(1)咀嚼による口腔領域の一次体性感覚野ならびに一次運動野の賦活パターンが安定化した。(2)咀嚼による前頭前野領域内での賦活部位が変化し,前頭極活動の抑制と右前頭前野背外側部(DLPFC)の活動の増加がみられた。(1)(2)の知見はいずれも,IODによる咀嚼刺激時の脳活動が,天然歯をもつ同年代被験者の脳賦活パターンに近づく結果を示していた。また,咬合バランスや咀嚼効率などの咬合状態も有意に改善が見られた。DLPFCは前年度までの研究で明らかにしてきた注意ならびに実行機能ネットワークの中枢領域であり,IOD治療がDLPFCを中心とした皮質間ネットワークを増強し,認知機能の改善に寄与しうるものであることが示唆された。
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