2013 Fiscal Year Research-status Report
米国の非行予防に関する教育的オルタナティブの研究―少年矯正と学校教育の連携-
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25870813
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮古 紀宏 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (60549129)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オルタナティブ教育 / 連携 / 教育保障 / 問題行動 / 司法 / カリフォルニア州 |
Research Abstract |
本研究では、米国カリフォルニア州のオルタナティブ教育(alternative education)、とりわけ、怠学、薬物、粗暴的逸脱行動、早期妊娠等のリスクを抱えた児童生徒(at-risk youth)を対象とした各種オルタナティブ学校に焦点を当て、その制度的特色を明らかにするとともに、制度が内包する意義と課題への考察を試みた。そのために、州教育省(California Department of Education)やソノマ郡教育委員会(Sonoma County Office of Education)、ソノマ郡プロベーション局(County of Sonoma Probation Department)、各学区教育委員会、各オルタナティブ学校等に対し、インタビュー調査と施設参観を行った。 継続教育校や郡コミュニティ・スクール、コート・スクールといったオルタナティブ学校の第一の特色として描き出せることは、非行や怠学、あるいは、虐待被害等、加害と被害といったリスクを抱える子どもに対して、その程度に応じて、義務教育の機会を保障できるように、さらには、その取り組みが行政のセクショナリズムを超え出るように、学校が多層に、かつ、そのリスクに応じられるよう「多機関的資源」(multi-agency resources)として制度設計されている点である。まさに、オルタナティブ学校は、その制度的枠組みにおいて、学校を基点とした関係機関の連携・協働があらかじめ内包されており、児童生徒の教育保障に関するセーフティネットの形成において重要な役割を果たしている。 しかし、一方で、オルタナティブ学校は、社会からの抗いがたい負のラベルを引き受け続けており、制度的理念とは異なる事態を生んでいることも看過できない。セーフティネットとしてのパイプが、地域への定着、包摂としてではなく、排除として機能してしまう側面をどのように克服できるのか、大きな課題となって立ち現われている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の主要なテーマである米国オルタナティブ教育制度研究について、オルタナティブ学校を主に、複数の教育関係施設を参観することができ、その進度はおおむね順調に進展しているということができる。各種オルタナティブ学校で行われているリスクを抱えた児童生徒への指導・支援について、各種関係機関とどのように連携がなされ、児童生徒の回復が図られているのか、実態調査に基づき検討することができた。また、2013年度は、早稲田社会学会(2013年5月)、アメリカ教育学会(2013年9月)、日本生徒指導学会(2013年11月)で研究成果報告を行った。加えて、『アメリカ教育学会紀要』(2013年12月)、『社会学年誌』(2014年4月)、『日本特別活動学会紀要』(2014年4月)にて、論文を寄稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、米国カリフォルニア州への訪問調査を実施するとともに、各種オルタナティブ学校に対する数量的調査を実施したい。数量的調査の目的は、各種オルタナティブ教育制度の社会的機能を明らかにすることである。指標としては、オルタナティブ学校に在籍している児童生徒の進路調査を試みたい。そのために、まずは、郡・学区レベルにおける非行対応系の多機関連携の取組や制度、推進されている代表的な教育的オルタナティブについて精査し、抽出する。そして、現地コーディネーターとの調整を経て、質問紙、インタビュー調査票とともに、調査日時等を確定する。確定後、質問紙を郵送・回収するとともに、補完的な訪問調査を実施する。回収した質問紙調査と補足的に実施したインタビュー調査の質的資料をもとに、得られたデータを分析する。上記の調査をもとに、カリフォルニア州のオルタナティブ教育制度の社会的機能について検証したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
急遽、研究遂行上、ノートPCを用意する必要(これまで使用していた研究用PCの故障)等が発生したため、使用計画に変更が生じ、最終的に「次年度使用額」が4,206円発生した。 直接経費として、米国への調査研究費(出張旅費)は45万円(交通費30万円、宿泊費15万円(8泊分))、研究成果発表費は10万円(交通費4万8千円、宿泊費5万2千円)、消耗品費は5万円(レーザープリンター・トナーカートリッジ、USBメモリ、ポータブルHDD等)、合わせて60万円の使用計画を立てている。上記の次年度使用額として、発生した4,206円は、主に消耗品費として、コピー用紙や複写費等に拠出をしたいと考えている。
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Research Products
(6 results)