2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞小器官の熱産生ダイナミクスを可視化するケミカルプローブの創製
Project/Area Number |
25870817
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新井 敏 早稲田大学, 先端科学・健康医療融合研究機構, 招聘研究員 (70454056)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 蛍光温度計 / 蛍光色素 / イメージング / スクリーニング / ケミカルバイオロジー / 熱産生 |
Research Abstract |
本研究では、細胞小器官にターゲットできる化学プローブ型の低分子蛍光温度計(以下、オルガネラ温度計)の探索と、実際の細胞内で生じる熱産生ダイナミクスを可視化することを目的としている。今年度は蛍光色素ライブラリーに対して、マイクロプレートリーダーで昇降温を繰り返し、温度変化に対して蛍光強度が変化する色素を探索した。可逆的に温度変化に応答した色素について、NIH3T3細胞を用いて細胞小器官特異性を調べ、それぞれER、核、ミトコンドリアなど局在ごとに分類した。次に、生細胞を用いて温度感受性の評価を行った。評価には、近赤外レーザーを用いて、顕微鏡視野内に温度勾配を作る手法を導入し、蛍光強度の変化を計測した。予備実験において、既に、ER指向性の温度に対する高い感受性を持つ色素(以下、ER温度計)を見出していた。ER温度計に関しては、予備実験を超えるものは得られなかったものの、固定化細胞でも安定して蛍光強度を保持し、同様に、近赤外レーザーを用いて、温度に対する感受性を評価したところ、固定化細胞でも生細胞とほぼ同じ感受性の値が得られた。次に、HeLa細胞をカルシウム指示薬(Fluo4)と同時に染色を行い、イオノマイシンにて細胞内へ急激なカルシウムの流入を起こさせ(カルシウムショック)、それに伴う熱産生の可視化を共焦点顕微鏡で行った。イオノマイシンを加えた後、カルシウム指示薬の蛍光強度の上昇から細胞質内のカルシウム濃度の上昇を確認した。それに伴い、少し遅れて生じる熱産生を可視化することに成功した。本成果は、オルガネラ温度計が熱産生の実時間のモニタリング可能であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1次スクリーニングを終了し、予備実験段階で得られていたER温度計以外にも、他の細胞小器官にターゲットできる蛍光温度計を見出すことが出来たことから、本スクリーニング法の有効性を実証できた。また、ER温度計を用いて、カルシウム濃度変化と熱産生の同時イメージングが成功したことから、蛍光温度計を用いた熱産生イメージング法の確立へ、ある程度目処がついた。したがって、初年度の概ね達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで得られているER温度計を用いて、筋肉の細胞(C2C12)、肝臓の細胞(Chang)、褐色脂肪細胞における熱産生イメージングを検討する。これらの細胞に対しては、ノルアドレナリンやグルコース濃度の変化などの刺激を与え、それに伴って生じる変化を観察する予定である。また、その他のオルガネラ温度計についても、同様に、その機能を生細胞にて評価する。また、カイネティクスを含めた色素の蛍光応答の特性の詳細な評価などを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、顕微鏡を購入予定であったが、研究施設内に顕微鏡の設備が整備され、使用者の混雑が緩和されたため、購入が急務では無くなった。したがって、初年度の予算の大半を占めていた物品購入を取りやめたが、研究遂行には支障を来たしていない。そのため、初年度の予定金額に差額が生ずることになった。 研究を遂行していく上で、新たに、蛍光色素の早い速度での応答特性を調べることが必要となった。したがって、当初の予定を変更して、反応速度を計測する装置の購入を新たに検討している。
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