2013 Fiscal Year Research-status Report
問題解決における技能としての数学作問の学習支援手法の考案
Project/Area Number |
25870820
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小島 一晃 帝京大学, 理工学部, 助教 (30437082)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 数学学習 / 作問 / 作問の失敗 |
Research Abstract |
線形一元一次方程式の文章題の作問を対象として,数学作問に熟達していないと考えられる一般大学生に作問課題を与えることで,作問の経験データを多量に取得する調査を実施し,その分析を行った.本調査の作問課題では,最初に一元一次方程式の例題が与えられ,新しい問題を作成してその問題文と解法を書くことが求められた.ここでは特に,取得されたデータから何らかの意味で失敗が起こったと考えられる作問に注目し,その原因を特定することで,初学者の作問スキルを改善のための支援方法を検討した. 本調査における作問における失敗の原因は,問題の解を得るための数学的な関係が問題文に含まれていない「数学関係欠落」,問題文に書かれた関係が数学的に誤っている「数学関係不良」,問題文に書かれた関係と解法が矛盾している「解法不一致」,問題文に書かれた制約内に矛盾が生じているため解が存在しない「制約矛盾」,問題文で十分な制約を提示していないため解が定まらない「制約不足」,問題文で提示している制約が過剰であるため方程式を立てずとも解が得られる「制約過剰」の6つに分類された. 学習者が制約矛盾と制約不足の失敗を含む作問をした場合,解法が持つ構造の中に制約の誤りが形式的に表現されるため,作問支援のための既存の計算機システムを用いて誤りを検出し,学習者にフィードバックすることが可能である.また,制約過剰の作問においては,解法で使用されていないパラメータが問題文に存在することになるため,これを検出して知らせることで,学習者に失敗を修正させる機会を作ることができる.一方,数学関係欠落,数学関係不良,解法不一致の作問については,失敗の検出に問題文の意味解析が必要となるため,計算機システムによる自動診断を行うことが困難である.つまり,これらの失敗を克服する支援を考案することが,初学者の作問スキルを改善する上での課題ということになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の平成25年度における課題は,数学における方程式の文章題の作問を経験的に記述し,作問における失敗を明らかにし,初学者の作問を改善するにあたっての課題を検討することにあった.これまでの取り組みにより,作問における失敗とその原因の記述,ならびに,それを克服する上での課題を導き出すに至っており,当初計画に鑑みておおむね予定通りの成果を得ることができたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に基づき,作問において失敗するケースが低減されるような学習活動を与えることで,初学者の作問スキルを改善する支援方法を検討する.ここでの目標は,平成25年度の知見に基づき,数学関係欠落,数学関係不良,解法不一致の作問に対しても有効な支援方法を考案することにある.この学習活動の候補として,作問に失敗した事例の評価を採用することを検討している.失敗事例の評価を経験することで,自身の作問において失敗が起こった時に,学習者が自分自身で気付いて修正できるようになることが期待される.そこで,作問の事例を学習者に評価させることが可能であるのか,ならびに,その効果を検証し,最終的に失敗事例を評価する活動の支援の構築を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定されていた調査のための出張のうちのひとつが,平成26年度に先送りされたため,旅費に次年度使用額が生じた. 当初の予定に基づき,調査のための出張旅費として使用する予定である.
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