2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化するハラールとアジアにおける日常実践と宗教規範の相互作用の比較研究
Project/Area Number |
25870825
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
砂井 紫里 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 研究助手 (90367152)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ハラール / 食文化 / 宗教規範 / 消費 / イスラーム / 中国 / マレーシア / グローバル化 |
Research Abstract |
本研究はムスリムの行動指針の中のハラール(合法、許された)とハラーム(禁止)をめぐり、現代のグローバルな状況下で展開するハラール産業について、とくにアジアに焦点をあて、その影響および日常実践と宗教規範の相互作用を検討するものである。 【具体的内容】これまでの自身の研究・調査をまとめながら、中国・台湾・マレーシア・タイ・日本を中心にハラール産業にかかわる情報を収集した。現代の中国語世界において、ハラール産業は「清真産業」と表現されており、ハラール食品については清真食品と言及されている。次に、中国の清真食品の定義とそれをめぐる「事件」について通時的展開の把握につとめた。中国においては、従来、イスラーム系の少数民族の慣習として民族政策の中で清真食品への対応がなされてきたが、近年、経済政策において、グローバルなハラール基準との擦り合わせや、文化資本としての清真の「再発見」が行われている。こうした上からの制度化と、人びとの日常的な食実践との間にみられる重点のゆらぎが明かになった。中国福建省・タイ・マレーシアにおいて予備調査を実施し、ハラール産業関係者への聞き取りを行った。またマレーシア・マラヤ大学アジア・ヨーロッパ研究院、タイ・チュラロンコーン大学ハラールサイエンスセンター等において研究者との研究交流を行った。 【意義】三年間の研究の初年度に際し、基本的な文献資料の収集とアジアにおける現代的ハラールの現状についてハラール概念と制度の概要を把握することを目標とした。概ね目標を達成することができた。 【重要性】初年度の成果は、急速に変化するハラールをめぐる現状の一端を明かにするとともに、グローバル状況下の制度化・標準化と多様な価値感の併存という課題を浮き彫りにした。これは、次年度以降に実施する各国におけるハラールの位置づけ、国際的連関についての調査・考察にむけて不可欠な基盤となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海外・国内での予備調査、研究会、国内外の専門家との研究交流をほぼ予定通りに実施した。また、研究成果の発信を積極的に行った。一つの国際学会(査読付き)で報告を行い、さらに六つの国際会議で発表をして論文集に論文を出版したほか、リサーチペーパーを出版した。さらに、海外の研究者との共著の論文集について海外の学術出版社との交渉を開始した。市民向けのセミナーや海外若手研究者向けの特別講義等において研究成果の社会的還元につとめた。よって、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果を踏まえて、引き続きフィールドワークによる参与観察と聞き取り調査および資料収集を行う。次年度は、統計などの量的データの把握に努め、ハラール産業の国際間の連携および中国・台湾・マレーシア・日本におけるハラールの位置づけについての分析を進める。事例の整理と比較検討をすすめるとともに、食のハラール研究会や関連の研究会・ワークショップにおいて報告しフィードバックを得る。また国際会議・セミナーや国際見本市への参加を通じて専門家や研究者との交流を深める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本学経理担当部門間の認識の違いにより予算の施行状況について実態とのずれが生じたため最終的に残額が発生した。 フィールドワークに不可欠かつ消耗の速い野帳の購入の足しにする。
|