2014 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期アメリカの対イラン政策と石油国有化運動―イラン国内「世論工作」に関する研究
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25870828
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
貫井 万里 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 招聘研究員 (90549578)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / アメリカ / イラン |
Outline of Annual Research Achievements |
1953年8月にイランのモサッデク政権を打倒した、米アイゼンハワー政権によるクーデター計画と世論工作について理解するために、米国中央情報局(CIA)の極秘文書(CIA Clandestine Service History, "Overthrow of Premier Mossadeq of Iran, November 1952-August 1953," March 1954, by Dr. Donald Wilber)を中心に精読した。 平成25年度に実施したアメリカ合衆国文書(FRUS)及びアメリカ国務省極秘文書(Confidential U.S. State Department Central Files Iran : Foreign Affairs and Internal Affairs 1950-1954)の分析結果と、CIA文書の分析結果を比較検討して、CIA、国務省そして国家安全保障委員会等アクター毎の役割と事件の全体像の把握に努めた。その上で、主にテヘラン・バーザールやイスラーム宗教指導者を対象として行われた世論工作の重要性の位置づけを試みた。分析の過程で、CIA文書と国務省極秘文書の間に、1953年8月クーデターへのアメリカの関与の描写に大きな齟齬があることを発見した。国務省文書は、モサッデク政権打倒クーデターにCIAが関与したことを公的には否定しようとする米政府の意図を反映していた可能性が考えられる。 その研究結果を、ドイツ現代中東研究学会(The German Middle East Studies Association for Contemporary Research and Documentation, DAVO)で報告を行った。その際、イランで発行された新聞等の調査の必要性を、セッションに参加していた研究者から指摘された。従って、来年度は、まだ読了していないアメリカ国務省極秘文書の通読に加え、ペルシア語の新聞資料等の分析を進めることとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1953年8月19日クーデターについて、CIA文書と、アメリカ合衆国文書(FRUS)及びアメリカ国務省極秘文書の比較検討をすることができた。しかし、アメリカ国務省極秘文書に関しては、1953年8月クーデター事件の前後を中心に文書を通読分析したものの、モサッデク政権期(1951-1953年)の全期間の関連文書を読了するには至らなかったため、再度、米国国立公文書館を訪問して通読する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
モサッデク政権期(1951-1953年)を扱ったアメリカ国務省極秘文書のうち、未読の文書を読了し、さらに、アメリカの対イラン世論工作の結果、すなわち、イラン側の反応を理解するために、ペルシア語の新聞資料等のペルシア語文献を精読し、本研究テーマについて複合的に理解する必要がある。
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Causes of Carryover |
当初、2014年11月に北米中東学会で研究成果を発表し、その際、アメリカ国立公文書館で外交文書の調査をすることを予定していた。しかし、11月に渡米が難しくなったため、2014年9月にドイツ現代中等研究学会で研究成果を発表した。そのため、調査できなかった米外交文書が残り、研究計画を変更したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、アメリカ国立公文書館での外交文書の調査出張、それに係る資料及び消耗品の購入・整理を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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