2016 Fiscal Year Annual Research Report
Brain protection against heat
Project/Area Number |
25870831
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松田 真由美 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 講師 (40634572)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 行動性体温調節 / 選択的脳冷却 / 高体温 / 発汗 / 皮膚血流 / 温熱的快適感 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度条件によって生じる快・不快感を「温熱的快適感」という。研究代表者はこれまでにヒトにおいて体表面の局所的な加温・冷却実験を行い、温熱的快適感には部位差があることを明らかにしている。例えば暑熱環境では顔や頚部の冷却で強い快適感が生じるが、腹部の冷却で生じる快適感は小さい。つまり頭部には温度上昇を予防するために都合いい温熱的快適感の特徴がある。この特徴は暑い時に顔を冷やす行為と結びつき、脳を熱による障害から守るために役立っているかもしれない。鼓膜温(接触型鼓膜体温計にて測定)は脳表面の温度変化を反映すると報告されている。本研究では鼓膜温(接触型鼓膜体温計にて測定)を脳温の指標とし、3種類の頭頸部冷却を行い脳温へ及ぼす影響について検証した。 健康な成人男性8名を対象とし、同一被験者に対して正常体温および高体温時に4回の実験を行った(①扇風機で顔面に送風、②額を温度刺激装置で冷却、③頚部を温度刺激装置で冷却、④冷却無し:コントロール施行)。鼓膜温、食道温、皮膚温、発汗量、皮膚血流、血圧、心拍を測定した。正常体温時は、いずれの施行においても鼓膜温と食道温の差は認められなかった。高体温時には、顔面への送風で鼓膜温は食道温より有意に低い値を示した。しかし、額冷却、頸部冷却、コントロール施行では鼓膜温と食道温の差は認められなかった。 本研究の結果から、高体温時の顔面送風には脳冷却効果があることが示唆された。偶蹄類やネコ科動物は高体温時に脳温を体幹部深部温より低く維持することができる(選択的脳冷却)。ヒトにおける選択的脳冷却の有無に関してはさまざまな議論があるが、本実験の結果はヒトにおいて選択的脳冷却を起こすには、顔を冷やすという行動が必要であることを示唆するものである。頭部における温熱的快適感の特徴は暑熱環境において顔を冷やす行動と関係し、脳を熱による障害から守るために役立つと考える。
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