2013 Fiscal Year Research-status Report
ケアの越境化と日本人高齢者の国際移動:マレーシア、タイ、フィリピンの事例から
Project/Area Number |
25870832
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小野 真由美 千葉大学, 国際教育センター, 特任助教 (00609688)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ケアの越境化 / 国際退職移住 / ロングステイ / メディカルツーリズム / 介護移住 |
Research Abstract |
本研究は、日本人高齢者(患者および要介護者)の国際移動に伴うケアの越境化の進展に関して、マレーシア、タイ、フィリピンの事例から明らかにすることを目的としている。日本人高齢者の国際退職移住は1990年代以降からみられる新しい動向であるが、マレーシア、タイ、フィリピンは、退職者向けの受け入れ制度を整備することにより長期居住や滞在型余暇(ロングステイ)の日本人高齢者を受け入れてきた。当該地域では、長期居住する日本人高齢者が増加しており、医療や介護サービスのニーズが徐々に生じている。本研究は、高齢者の国際移動のもつ「労働力を必要とする人の移動」の側面に焦点を当て、医療や介護サービスを求める患者・消費者の越境化を生じさせる重層的構造を解明する。 平成25年度は、1)当該地域における各国のメディカルツーリズムの政策的展開と医療・福祉の制度面での整備状況の把握、2)マレーシア(クアラルンプール)での医療機関と日本人高齢者の退職移住者の動向に関する現地調査、3)学会における一部成果発表を実施した。マレーシアでは、日本人高齢者のコミュニティ形成とネットワーク化が顕著であり、現地の医療や介護サービスに関する情報や知識の共有化が進展している状況が明らかとなった。また、将来的な現地社会の高齢化を念頭におきつつ、新たなニーズとなる外国人高齢者を対象に含む医療や介護サービスの事業化を促進する動きが現地の民間病院の一部にみられ、外国人高齢者の国際移動は現地の医療や介護サービスの変容を生じさせる一要因となることが指摘できる。 アジアの地域統合に向けた政治経済の動向を背景に、ASEANの高度人材の移動が加速している。当該地域の医療産業は、医療人材、患者、病院経営の国境を越えた移動を操作することが営利に結び付いている。次年度は、メディカルツーリズムや患者の国際移動の媒介となるアクターの実態解明に取り組みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画よりも現地調査の訪問国数を減らし、日本国内で患者や要介護高齢者の国際移動に関わるアクターのヒアリングと文献収集による動向調査に重点をおきつつ研究を進め、次年度の現地調査を効率的に実施する準備をおこなうことができた。第17回世界人類学会(17th World Congress of the International Union of Anthropological and Ethnological Sciences)に参加し、インターネットを利用した高齢者の社会生活に関する分科会で研究発表を行うことで、欧米圏の老年人類学の研究動向を収集するだけでなく、本研究に対する貴重なコメントを得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、マレーシア、タイ、フィリピンの事例からケアの越境化を考察することを目的としているので、初年度に実施していない現地調査を効率的に進めていく。今後の研究の発展のためには、調査国の医療や福祉および国際移動を専門とする現地の研究機関に所属する研究者との意見交換やネットワーク構築を推進することが重要となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた現地調査の訪問国数を減らし、次年度に実施する現地調査を増やす予定である。本年度は日本国内で患者や要介護高齢者の国際移動にかかわるアクターのヒアリングと文献収集による動向調査に重点をおきつつ研究を進め、次年度の現地調査を効率的に実施する準備をおこなったためである。 平成26年度は、8月27日~30日にスロヴェニアのリュブリャナ大学で開催されるヨーロッパ日本研究協会の研究大会での分科会発表、タイ・フィリピンでの医療・介護を求めた患者・要介護高齢者の国際移動と医療介護施設に関する現地調査、さらに、調査対象国(マレーシア・タイ・フィリピン)へ医療目的で渡航・滞在する外国人患者の送り出し国であるサウジアラビア・オマーンの医療事情に関する現地調査を予定している。
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Research Products
(7 results)