2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870840
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
齋藤 美和 神奈川大学, 工学部, 助教 (60594215)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / プロトン |
Outline of Annual Research Achievements |
中温度域まで水を吸蔵し、その水が550℃以下で主にプロトンとして伝導に寄与する新しい酸素欠陥型ペロブスカイト関連化合物の合成に成功している。これらの機能性を最大限に発揮させるため、新しい湿式法による合成をペロブスカイト関連化合物において試みた。 合成は有機物に金属を配位させた中間体を液相合成し、その溶媒は加熱蒸発、エバポレーション、凍結乾燥の3種で除去することにより前駆体を合成した。前駆体は低温焼成により未反応の有機物を除去し、その後、再度より高温で焼成することによって、有機物を除去した。生成した粉末をペレット状に一軸加圧および静水圧加圧によって成形し、高温で焼結させた。生成物を固相合成法と比較すると、金属酸化物の反応性の向上と、焼結体の相対密度が大幅に増加する結果が得られた。また、有機物として、低分子と高分子およびポリマーの重合後を変化させたものを用いて比較実験も行っている。 相対密度の増加は電気伝導度の向上へつながることが期待されたが、残念ながら液相合成による著しい電気伝導度の向上は観測されなかった。湿式合成法は固相反応法と比較して試料が均一かつ緻密に合成できているにもかかわらず、結果として物性(特に電気伝導度)の大幅な変化を見出せなかった主な原因として、固相合成法と液相合成法による生成物の組成変化に起因すると考えられる。液相合成法は上記のように固相法と比較して利点が多く挙げられる一方、組成制御が困難な場合が確認されており、本実験の結果も同であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規プロトン伝導体の合成に関して、液相合成法による合成については、計画以上の新たなアプローチを構築できたため、評価できると考えている。しかし、その成果が直接電気伝導度の向上へは繋がっていない結果が得られたため、「やや遅れている」と評価した。詳細は以下の通りである。 新しい湿式合成法により、ナノ構造を有する前駆体が得られたため、焼結体は固相法よりも大幅に高密度である結果が得られた。 イオン伝導体のおける電気伝導度と相対密度の関係は、一般的に(特殊な場合を除いて)比例傾向にあるため、湿式合成法により電気伝導度の向上が期待された。 しかしながら、結果として電気伝導度は大幅には向上しなかった。 この原因としては、生成物の仕込み組成からのずれが最大の原因であると考えられるため、改善の余地がある。 上記のように、新しい合成法に注力してきたにも関わらず、結果としてそれが物性には直接的に影響を及ぼさなかったため、全体的な研究計画としてはやや満足する結果は得られたかったと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.新しいプロトン伝導体が水素生成のための有用な電解質であることを証明するためには、広い水素および酸素分圧下においても使用可能であることを確認する必要がある。 そのため、種々の雰囲気化における電気伝導度測定を行い、それらが各々どのようなキャリアーを有するか、明確にする必要がある。今後、直流四端子法による水素~酸素存在下の電気伝導度測定を行い、試料の応用発展の可能性を明らかにする。
2.水の急増が特徴的であるため、その吸収・放出条件に付いて、詳細に検討し、その応答性を更に向上させる工夫が求められると考えている。 まず、熱重量分析を用いて、一定温度(中温度域)において、ガス雰囲気を切り替えることにより、ガスの吸蔵および脱離過程について詳細に調べる。 それらが、温度や合成法および組成変化に対してどのように影響を及ぼすのか、明確にする。
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Causes of Carryover |
昨年度の予算使用については、概ね予定金額と一致している。 しかし、一昨年度の予算使用が計画よりも差が生じた分については、昨年度に執行していないため、次年度使用額が生じた。 主な原因としては、一昨年度、湿式法による合成手法の開発に注力していたため、試薬や実験消耗品の購入については、一昨年度購入したもので補填でき、昨年度は新たに購入する必要性があまりなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に実験消耗品および試薬の購入に使用する予定である。 また、電気伝導度測定をより正確に行うため、データロガーの購入を予定している。
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Research Products
(5 results)