2014 Fiscal Year Research-status Report
がんの終末期医療における鍼灸の意味とは何かー在宅での鍼灸臨床の現場からー
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25870848
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
高梨 知揚 東京有明医療大学, 保健医療学部, 助教 (10563413)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鍼灸 / 在宅緩和ケア / 医療人類学 / 参与観察 / がん / 治療空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に在宅緩和ケアにおける鍼灸治療の場の参与観察を通じて、がん終末期医療における鍼灸の関わりの意味を医療人類学的観点から明らかにする研究である。平成26年度は、平成25年度に引き続き、在宅緩和ケアを鍼灸師も共に実践する診療所において、第2回目の参与観察および聞き取り調査を行った。参与観察および聞き取りの対象となった患者は6名、鍼灸師は1名であった。また第1回目の調査時と同様に、鍼灸師以外の他医療職種7名から在宅緩和ケアにおける鍼灸に対する見解を得ることを目的として聞き取りを行った。前年度に得られたデータも含めて分析を行った結果、患者にとっての鍼灸の意味付けは、痛みや浮腫などの具体的な個々の愁訴の軽減だけではなく、「体全体が軽くなる」、「すっきりする」、「何かが抜ける感じ」など、「身体全体の変化をもたらすもの」という意味付けが中心となっていた。また、鍼灸治療の時間は通常の医療的ケアとは「異なる時間」であり、一方で週に1度ある「楽しみ」など、「日常の中にワンクッション入るもの」という意味付けもなされていた。他医療職種の見解として、鍼灸治療が「症状緩和の手段」という見解が多く見られたことに加え、患者にとって「手段があるという希望」をもたらすものという認識も見られた。参与観察からは、言葉のない身体同士のコミュニケーションに加え、立ち上るお灸の煙、艾の匂い、鍼を行うかすかな動作音などの様々な鍼灸特有の臨床を構成する因子が関連しあうことで、独特の静的な治療空間を生み出していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、在宅緩和ケアの現場で鍼灸治療が行われている2施設での調査を予定している。1施設での調査は予定通り完了したが、1施設目で得られたデータの分析が遅れ、その関係で平成26年度末から実施予定であったもう1施設での調査を開始できなかった。その為当初の予定より若干遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、当初の予定通り2施設目での調査を行う予定である。調査は1ヶ月前後の継続的調査を2クール行う予定である。2施設目での調査は、1施設目の調査結果を踏まえ、患者の体全体の状態と鍼灸治療の関係性にフォーカスして聞き取りおよび参与観察を行う。また他医療職種の観点を踏まえ、在宅緩和ケアの臨床の場における通常の医療的ケアと鍼灸治療の差異に注目し、多面的にがん終末期医療における鍼灸の意味について考察する。
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Causes of Carryover |
平成26年度後半に実施予定であった2施設目の調査が実施できなかったため、その際に必要な旅費分が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度使用額は、主として調査出張旅費に使用する予定である。また、学会発表の参加費および旅費、論文投稿費用、書籍購入費用として使用する予定である。
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