2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870849
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
山崎 晴丈 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (20456776)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | テロメア / シェルタリン / 増殖停止細胞 |
Research Abstract |
従来,真核生物染色体末端のテロメアの維持機構に関する研究は,増殖する細胞を用いてなされてきた。しかし多細胞生物の多くの細胞は分化して増殖しない状態で機能している。また酵母をはじめとした単細胞生物も,自然環境では生涯の多くの時間を増殖停止状態で過ごしている。そこで本研究では,増殖が停止した細胞におけるテロメア維持機構の解明を目的とした。これまでに我々は分裂酵母において,増殖細胞でテロメアの末端保護とテロメレースのテロメアへのリクルートに機能しているテロメア蛋白質Ccq1が,増殖停止細胞で発現が劇的に抑制されていることを見出している。本年度はまず他の既知テロメア結合蛋白質についても同様に解析を行った。Flagタグが付加された各蛋白質を発現する株を用いて増殖細胞,増殖停止細胞を調整し,それらの中の各蛋白質の存在量を抗Flag抗体を用いたウェスタンブロッティング解析で検討した。その結果,テロメア結合蛋白質であるPot1, Tpz1, Poz1, Rap1は,増殖細胞でも増殖停止細胞でも発現量が一定であるという結果を得た。また二番染色体右腕のテロメア配列をプローブとしたサザンブロッティング解析から,増殖細胞と増殖停止細胞ではテロメア長に変化がないことも明らかとなった。すなわち,Ccq1という末端保護機能をもつ蛋白質が失われた状態でも増殖停止細胞ではテロメア長が維持されていることが示された。これらのことから増殖が停止した細胞では未知の因子がテロメアの保護に関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
増殖細胞でのテロメアの維持には,テロメア結合因子であるシェルタリン複合体とCST複合体が協調的に働くことが知られている。また染色体の末端であるテロメアは,正常末端と峻別される必要がある。すなわち,テロメア維持のためにはDNA損傷認識機構からの回避が必須であると考えられていた。しかし我々の以前の研究で,ATM, ATRといったDNA損傷認識因子がテロメアの維持に必要であることが分かっており,ATM,ATRの下流で働くキーファクターとしてシェルタリン因子のCcq1が機能することをも明らかにしてきた。酵母とmammalianでは,シェルタリン複合体やCST複合体の相同性が高く,酵母のテロメア研究の成果は,mammalianのテロメア維持機構の理解を直接的に繋がるものである。本研究ではまずテロメア維持に最重要と考えられるシェルタリン複合体が増殖停止細胞でも機能するかどうかに着目して研究を行った。酵母でもmammalianでも増殖停止細胞のテロメア維持機構に関する知見はほとんどないが, 今回「末端保護機能をもつCcq1が存在しない状態でも増殖停止細胞ではテロメア長が維持される」という結果を得ており,本研究によって初めて増殖細胞と増殖停止細胞のテロメア維持機構に違いがある可能性を示唆した。今後同様の手法でCST複合体やDNA損傷応答機構を構成する因子の解析を行えば,テロメア維持,引いては真核生物の染色体が世代を超えて長きにわたり安定して継承される機構について,包括的な理解が得られるものと考えら得る。またこれらの知見に基づいて,mammalianでも増殖停止細胞の研究が進めば,がんや老化といった現代医療の中心的な課題の解決の足がかりとあるであろう。以上の理由により,「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はテロメア維持に関与する因子の中でもシェルタリン複合体に焦点を当て解析を行ってきた。平成26年度は,ほぼ導入に成功した「細胞周期の特異的な時期に目的蛋白質を欠失させることが可能な手法(デグロンシステム)」を用いて,Pot1, Tpz1, Poz1, Rap1といった,増殖停止細胞でも蛋白質量が維持されていた因子を増殖停止細胞特異的に欠失させる。その後テロメアがいかなる運命をたどるかについて解析し,増殖停止細胞においてどのようなend resection機構が働いているのかを明らかにしていく。またテロメア維持に必要な他の既知因子についても同様の解析を行う。さらに増殖停止細胞でテロメア維持に必須の役割を果たしている既知蛋白質に結合する因子を質量分析機の一種であるLS-MS/MSを用いて網羅的に同定することも試みる予定である。これらにより,増殖停止細胞におけるテロメア維持機構の全貌解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
デグロンシステムの本格的な導入を平成26年度に持ち越したため。 プライマー,DNAポリメレース,オーキシン等の試薬の購入に用いる。
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