2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870849
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
山崎 晴丈 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 助教 (20456776)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テロメア / 分裂酵母 / G0細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまでまったく焦点が当てられてこなかった,長期に増殖停止した細胞におけるテロメア維持機構の解明を目的としている。このような機構の存在を示せれば,テロメア維持機構の包括的な理解のために重要な寄与をなすことは疑い得ない。分裂酵母の窒素源枯渇状態が,必ずしもヒト分化細胞(長期に増殖しない細胞)の状態に当てはまるとは限らない。しかし増殖細胞におけるテロメア維持に関与する因子・機構が,分裂酵母とヒトでは高度に保存されていることから,本研究はヒト分化細胞でのテロメア維持機構の理解に繋がることが期待される。分裂酵母でもヒトでも,テロメアの維持にはシェルタリンよ呼ばれる蛋白質複合体が中心的な役割を果たしている。分裂酵母のシェルタリンはPot1, Tpz1, Ccq1, Poz1, Rap1, Taz1の6因子からなっており,そのうちPot1がテロメアの一本鎖DNA部分(Gテイル部分)に,Taz1が二本鎖DNA部分に結合し,その他の因子がPot1, Taz1を繋ぐことで,ブリッジ構造を構成している。 平成25年度までにその中でもCcq1が増殖細胞に比べて増殖停止細胞(G0)細胞では顕著に発現量が低下し,テロメア局在が失われていることを明らかにしていた。この際には栄養要求性のある株を使用して実験をしていた。しかし今年度,栄養要求性のない株を使用して実験を行ったところ,Ccq1の発現量やテロメア局在は,増殖細胞とG0細胞で大きな違いがないことが明らかとなった。さらにPoz1, Rap1についても,栄養要求性のない株で同様の検討を行ったところ,増殖細胞とG0細胞で発現量やテロメア局在に変化のあるものはないことが明らかとなった。 G0期で長期に培養をした場合には,少なくとも1週間は増殖細胞と同程度のテロメア長を維持していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウェスタン解析やクロマチン免疫沈降(ChIP)を行う際には,目的蛋白質にFlagなどのタグを融合させ,そのタグを認識する特異的抗体を用いる必要がある。平成25年度までのそのような融合蛋白質を発現させる株は,ロイシンやウラシルを要求する株を用いていた。しかしながら本年度は栄養要求性がない株で目的蛋白質とタグが融合した蛋白質を発現させる株を作製した。それらの株を用いて増殖細胞とG0細胞でシェルタリン構成因子の発現量とテロメア局在を検討したところ,Ccq1を始め,Poz1, Rap1では違いがないことが明らかとなった。栄養要求性のある細胞ではG0アレストが十分ではなかった可能性が考えられたため,現在シェルタリン構成因子はじめ,増殖細胞でテロメア維持に必要と考えられている蛋白質とFlagタグの融合蛋白質を発現する株を栄養要求性がない状態に置き換えているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の因子をデグロンシステムを用いてG0期特異的に欠失させ,でテロメア末端保護に不具合が生じた時,G0細胞はどのような生理反応を示すのかを検討する。まずは既知のDNA損傷応答機構経路のどの因子が活性化するかを, ChIPによってそのテロメア局在を検討することや,GFPとの融合蛋白質がテロメア局在を示すかといった手法を用いて調べる。また最終的にそのままテロメアが失われ死ぬのか,あるいは別の染色体のテロメアを鋳型とした相同組換えによりテロメアを維持して生きのびるのかを検証する。増殖細胞ではテロメア維持に必要な因子が失われた場合にどのような運命をたどるかについては,申請者が行った研究を含めて詳細に検討がされており,これと比較検討することで包括的なテロメア維持機構の理解が深まると考えられる。 デグロンシステムにより欠失された場合,増殖細胞と違う影響をテロメア維持に及ぼすような因子については,G0細胞特異的なテロメア維持に関与している可能性が高い。そのため,それらの因子に特異的に結合する新規因子を質量分析機を用いて明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
遺伝学的背景が異なる分裂酵母を用いた場合に結果が異なることが明らかとなったので,栄養要求性がない野生株ですべての実験をやり直しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プライマー,DNAポリメレース,オーキシン,培地の購入や,研究打ち合わせに用いる予定である。
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